【秋の季語】柿

【秋の季語=晩秋(10月)】柿

日本の数少ない在来果樹の一つ。

六~七月頃には黄緑色の果実ができるが、これを「青柿」と呼ぶ。

気温が下がり寒さを感じ始めるころまでに色づいてゆき、収穫期を迎える。

柿の花」は夏の季語。また秋には葉が色づくので、「柿紅葉」は秋の季語、「柿落葉」は冬の季語として詠まれる。「柿若葉」は夏の季語となる。

果実には甘柿と渋柿があるが、渋柿は干柿にすると甘くなる。

甘柿は渋柿の突然変異種と考えられており、日本最古の甘柿の品種は神奈川県麻生区原産の禅師丸柿(1314年)と言われている。


【柿(上五)】
柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺  正岡子規
柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺  正岡子規
柿を食ふ君の音またこりこりと 山口誓子
柿渋き顔にいつはりなかりけり 加藤楸邨
柿吊す湖畔の茶店淵に映え   杉田久女
澁柿を食べさせられし口許に 山内山彦
柿の種誰も交換してくれぬ 辻田克巳
柿を剥く十指のすべて柿とあり 斉藤美規
柿の色とにかく生きなさいの色 宮崎斗士
柿入れて斜めになつてゐる鞄 西生ゆかり
富有柿対角線の走りけり  小野あらた

【柿(中七)】
行楽の眼に柿丸し赤や黄や 川端茅舎
胸底に柿の実の冷え融けてゆく 篠原梵
桃ほどに腐まずに柿寂びにけり 八田木枯
知らん顔して柿捥いで行く僧よ 山口昭男

【柿(下五)】
いちまいの皮の包める熟柿かな 野見山朱鳥
ひたむきの顔の来るなり柿の秋 波多野爽波
大き手の友より貰ふ里の柿 村越化石
いつとなく晩年の顔柿の秋 廣瀬直人

【その他】
熊飢えたり柿がつがつと食うて撃たれ 金子兜太

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