
【夏の季語=初夏(5月)】柿の花
初夏、「柿」の木にも蕾があらわれ、やがて「柿の花」を咲かせる。花といっても葉と似た緑色であるため目立たないが、それゆえに見つけたときには季節の推移を感じるもののひとつ。田中裕明に〈柿の花から柿の実になるところ〉があるように(この句は師・波多野爽波の〈鳥の巣に鳥が入つてゆくところ〉を思わせる)、梅雨の時期に実がなりはじめ、「青柿」となる。

【柿の花(上五)】
柿の花散るや仕官の暇無き 正岡子規
柿の花土塀の上にこぼれけり 正岡子規
柿の花落つ薪水のほとりかな 右城暮石
柿の花こぼる抜け道廃れずに 宮津昭彦
柿の花から柿の実になるところ 田中裕明
柿の花はるかに落ちてゆきにけり 岸本尚毅
【柿の花(中七)】
朝ごとに落ちたる柿の花拾ふ 平井照敏
【柿の花(下五)】
こぼるるもくだつも久し柿の花 富安風生
十ばかり拾ひてみたり柿の花 三好達治
【ほかの季語と】
青柿が土にめり込み黴を噴き 岸本尚毅
【自由律】
交媒のない 一本の柿の花 うんとおちとる 吉岡禅寺洞
【短歌】
柿の花それ以後の空うるみつつ人よ遊星は炎えているか 塚本邦雄
柿の花こぼれる木かげ少年がみどり児のため唄う子守歌 武川忠一