
何もしない夫と言はれ朝寝かな
山口優夢
2014年発表の作品。この句に描かれているのは、殆ど育児に関わらない男親の姿である。当時(2014年度)の厚生労働省による雇用均等基本調査によると、男性の育児休業取得率は2.30%。対して女性は85.5%。07年度から女性の取得率は80%超で安定している一方、男性の取得率は2%前後と低いままであった。出産後も仕事を続ける女性が増えた一方で、父親は育児のために仕事をセーブすることが珍しかった当時の状況が窺える。
そのような時代から見たら、10年後の2024年度に男性の育児休業取得率が40%を超えたとは驚きであろう。理由として挙げられるのは、いずれも2022年に始まった「産後パパ育休」制度(育休の分割取得)と、育児・介護休業法の改正による従業員への育児休業の取得意向の個別確認の義務化である。子どもの出生後8週間以内であれば育休を短期間に分割できる上に、育休中も一部就労が可能なため、職場の事情に合わせて柔軟な育休取得が可能となった。同時に、これまで育休を「言い出しにくい」と考えていた男性職員が、雇用者側からの声かけにより取得への一歩を踏み出しやすくなったことも考えられる。
以前よりも育児に積極的に関わる父親はぐっと増えた現代だが、家庭内での夫婦間の行き違いは多々発生しているようである。乳幼児のいる家庭向けの月刊誌『クーヨン』2026年5月号の読者アンケートによれば、子ども一人目の出産後、初めての育児にとまどい心身の不調に陥った「産後うつ」の経験をもつ女性から、そのきっかけは「パートナーとの関係が変わった」ことが一番に挙げられている。夫が育休を取って自宅にいるのは良いが、「家事を頼んだ通りにはしてくれない」「こちらの状況を察して動くことをしない」「家事をやっても毎回『俺流』のウンチクつきなのが正直つらい」「出産がゴールだと考えていたのか、産後すぐに自分の趣味に出かけ、その様子を楽しそうに産後入院中の妻に話してきて強いストレスだった」など。対する夫の不満は、「(家事・育児の)やり方や手順が違うと細かな点を指摘される」「育児に参加する、できることが前提になっていて、こちらの疲労などは考慮されていない」「やってないことを探すのではなく、やったことに目を向けて欲しい」「職場の上司は育児に参加してこなかった世代なので、仕事を終えて早く帰ろうと必死になる苦労を根本的には理解していない」など。
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