【俳書探訪】片山由美子『鷹羽狩行の百句』(ふらんす堂、2018年)

この点でいうと、鷹羽狩行が「狩」を創刊主宰した1978年の翌年には、ほとんど同じ年齢の稲畑汀子(1931-)が「ホトトギス」の主宰を継承していることが象徴的であるように見えてならない。平成が終わらぬうちに、主宰業から退いたこともまた狩行・汀子は、共通している。【註:稲畑汀子は「ホトトギス」主宰を2013年10月に稲畑廣太郎に譲った。】

もちろん、「狩」と「ホトトギス」の句柄は同じではない。季語に求める条件も異なる。とくに「季感」に関しては、まったく考え方が異なると言っていい。「ホトトギス」では、「季節感(季感)」は必ずしも必要とはされないからだ。

しかし、誓子が「新興俳句」をきっかけに虚子から離れた以上、師を超えるためには、誓子が捨てようとした〈「ホトトギス」的なるもの〉、もっといえば、虚子の(発句ではなく)平句的な日常詠へと、狩行が戦略的に回帰していくという面があっても不思議ではない。

狩行と虚子。そのことについて片山は、明示的に語ってはいない。

つまり、この本は「さしさわりなきところまで」で止まっている。そこから先のことは、読者の興味に委ねられている。


【執筆者プロフィール】
堀切克洋(ほりきり・かつひろ)
1983年生まれ。「銀漢」同人。第一句集『尺蠖の道』にて、第42回俳人協会新人賞。第21回山本健吉評論賞。


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