【秋の季語=三秋(8月〜10月)】蓑虫
木の葉や小枝を糸でくっつけて巣を作り、そのなかにひそんでいるミノガの幼虫。日本で約40種類ほどが知られていて、よく観察されるのは、「オオミノガ」「チャミノガ」の2種類です。蓑虫は鳴くことはありませんが、清少納言の『枕草子』のなかに、鬼の捨て子であり、「ちちよ、ちちよ」と鳴くという記述があることから、「蓑虫鳴く」もまた俳句では季語として使われることがあります。
【蓑虫(上五)】
蓑虫や滅びのひかり草に木に 西島麦南
蓑虫のあたたまりゐる夕日かな 原石鼎
蓑虫の蓑は文殻もてつづれ 山口青邨
蓑虫の蓑あまりにもありあはせ 飯島晴子
蓑虫の出来そこなひの蓑なりけり 安住敦
蓑虫にうすうす目鼻ありにけり 波多野爽波
蓑虫を無職と思う黙礼す 金原まさ子
蓑虫の未完の蓑をまとひたる 小林康治
蓑虫のいのちふくらむ風の中 宇多喜代子
蓑虫の蓑にも劣るものまとひ 鷹羽狩行
蓑虫のまだ雨知らぬ蓑の揺れ 鷹羽狩行
蓑虫を見つづけて皆一人なり 山西雅子
蓑虫の世間知らずの顔小さく 三村純也
蓑虫になりてもみたき日和かな 片山由美子
蓑虫の糸にぶつかる日本晴 鎌倉佐弓
蓑虫に叶はぬ馬鹿をやつてゐる 櫂未知子
蓑虫の揺れる父性のやうな風 小泉瀬衣子
蓑虫を自分の鼻の やうに見る 鴇田智哉
蓑虫の蓑脱いでゐる日曜日 涼野海音
【蓑虫(中七)】
妨げにならぬ蓑虫掲示読む 森田峠
貌出して蓑虫も空見たからう 山田弘子
門ごとに蓑虫の泣く日となりぬ 宇多喜代子
【蓑虫(下五)】
恬淡を装ひてゐし蓑虫よ 大牧広