【夏の季語=三夏(5ー7月)】水羊羹
和菓子の定番である「羊羹」の一種。
羊羹には小豆・砂糖・寒天を煉りながら煮詰めて、型に流し固めた「煉り羊羹」、小豆・砂糖に寒天で固めるのではなく、小麦粉や葛粉を加えて蒸し固める「蒸し羊羹」もあるが、「水羊羹」は小豆・砂糖・寒天を煉り、型に流し固めたもの。煮詰めず作ることで水分量が多くなり、滑らかな舌触りや「つるん」とした食感を味わうことができる。
寒天を使った水羊羹は、明和年間(1764年-1772年)ごろの成立とされる料理書『調味雑集』に登場する。蒸し羊羹のやわらかいタイプの水羊羹のバリエーションとして寒天を使った水羊羹が生まれ、寒天を使う製法が煉羊羹の誕生へとつながっていったと考えられる。
当時の製法の都合で、冬に作られていた水羊羹も、主に江戸時代後期には、季節を問わず作られるようになり、夏の菓子として定着したのは大正時代から昭和初期にかけてである。
【水羊羹(上五)】
水羊羹喜劇も淡き筋ぞよき 水原秋櫻子
水羊羹のなかに棲みたる遠さかな 佐々木紺
【水羊羹(中七)】
されど死は水羊羹の向かう側 櫂未知子
【水羊羹(下五)】
鳴りのよき明治の時計水羊羹 菅裸馬
正眼に楊枝をかまへ水羊羹 川崎展宏
水にさす影切り分けて水羊羹 長谷川櫂
【ほかの季語と】