連載・よみもの

「野崎海芋のたべる歳時記」苺のシャンティイ風


苺のシャンティイ風

Fraises à la chantilly


露地物の苺がお安くなってきましたね。
ほんらい初夏のものである苺、小粒で野趣のある味わいが大好きです。

フレーズ・シャンティイ(苺のシャンティイ風)は、いちごの上にホイップクリームをのせた、フランスの初夏の定番デザート。
ホイップクリームのことを「クレーム・シャンティイ」というのですが、これはパリの北にある町の名前に由来します。

シャンティイ城は、ブルボン王家に連なるコンデ公が所有した美しいお城。砂糖入りのホイップクリームは、ルイ14世を迎えての晩餐会のために、コンデ公お抱えの給仕長ヴァテールが考案したのが始まりと伝えられています。

シャンティイ発祥のフレーズ・シャンティイ、わたしが子供たちと訪れた時も、城下のあちこちに宣伝の看板が出ていたのを覚えています。
シャンティイ城のすぐ近くには競馬場があり、トレーニングや移動中の馬を何頭も見かけました。城の大厩舎は馬のショーを見ることのできる博物館として公開されており、現代のシャンティイは馬の町でもあるのでした。

わが家のフレーズ・シャンティイは、生クリームにクリームチーズを混ぜて甘さ控えめにしています。苺はレモン汁と砂糖でマリネして。

親馬は梳らるゝ仔馬跳び  高野素十

季語【仔馬】【馬の仔】【苺】

*本記事は野崎海芋さんのInstagram( @kaiunozaki )より、ご本人の許可を得て、転載させていただいております。本家インスタもぜひご覧ください。


【執筆者プロフィール】
野崎 海芋(のざき・かいう)
フランス家庭料理教室を主宰。 「澤」俳句会同人、小澤實に師事。平成20年澤新人賞受賞。平成29年第一句集『浮上』上梓。俳人協会会員。



【セクト・ポクリット管理人より読者のみなさまへ】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

関連記事

  1. 俳人・広渡敬雄とゆく全国・俳枕の旅【第30回】暗峠と橋閒石
  2. 【連載】久留島元のオバケハイク【第4回】「野槌」
  3. 【読者参加型】コンゲツノハイクを読む【2024年2月分】
  4. 【#23】懐かしいノラ猫たち
  5. 「野崎海芋のたべる歳時記」蕪のクリームスープ
  6. 【第5回】ワイキキや黴臭きものなにもなし/千野千佳
  7. 【クラファン目標達成記念!】神保町に銀漢亭があったころリターンズ…
  8. 神保町に銀漢亭があったころ【第122回】樫本由貴

おすすめ記事

  1. 黒き魚ひそみをりとふこの井戸のつめたき水を夏は汲むかも 高野公彦
  2. 酔うて泣きデザートを食ひ年忘 岸本尚毅【季語=年忘(冬)】
  3. 【春の季語】朧月
  4. 【冬の季語】嚏(嚔)
  5. ここは敢て追はざる野菊皓かりき 飯島晴子【季語=野菊(秋)】
  6. あさがほのたゝみ皺はも潦 佐藤文香【季語=朝顔(秋)】
  7. 【冬の季語】煤逃
  8. 早春や松のぼりゆくよその猫 藤田春梢女【季語=早春(春)】
  9. 笹鳴きに覚めて朝とも日暮れとも 中村苑子【季語=笹鳴(冬)】 
  10. 【冬の季語】蕪

Pickup記事

  1. 蝶落ちて大音響の結氷期 富沢赤黄男【季語=結氷期(冬)】
  2. 神保町に銀漢亭があったころ【第97回】岸田祐子
  3. 幾千代も散るは美し明日は三越 攝津幸彦
  4. 盥にあり夜振のえもの尾をまげて   柏崎夢香【季語=夜振(夏)】
  5. 「十六夜ネ」といった女と別れけり 永六輔【季語=十六夜(秋)】
  6. 【#39】炎暑の猫たち
  7. 左義長のまた一ところ始まりぬ 三木【季語=左義長(新年)】
  8. 【夏の季語】サイダー
  9. 趣味と写真と、ときどき俳句と【#01】「木綿のハンカチーフ」を大学授業で扱った時のこと
  10. 辛酸のほどは椿の絵をかけて 飯島晴子【季語=椿(春)】
PAGE TOP