伊那谷に住み、伊那谷を詠み続ける作者の掲句に戻ろう。
とび・からす息合わせ鳴く小六月 城取信平
掲句は、これから訪れる厳しい寒さを前に授かった束の間の暖かさを共有する、生き物たちへの親しみと慈しみの心に満ちている。
もう仙丈ヶ岳、木曽駒ヶ岳などの高峰は冠雪している頃だろう。
筆者は今、ニューヨークの空のもと、伊那谷の空、鳥たち、そして、伊那谷を愛する人たちに思いを馳せている。
俳句雑誌『みすゞ』2020年2月号所載。
*井上井月の没日、辞世の句、その意訳、については、北村皆雄箸『俳人井月』(岩波書店)より引いた。
追記(2025.5.31)
城取信平氏が、去る10月18日に94歳にてご永眠されました。心よりご冥福をお祈りいたします。
(月野ぽぽな)
【執筆者プロフィール】
月野ぽぽな(つきの・ぽぽな)
1965年長野県生まれ。1992年より米国ニューヨーク市在住。2004年金子兜太主宰「海程」入会、2008年から終刊まで同人。2018年「海原」創刊同人。「豆の木」「青い地球」「ふらっと」同人。星の島句会代表。現代俳句協会会員。2010年第28回現代俳句新人賞、2017年第63回角川俳句賞受賞。
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