【読者参加型】
コンゲツノハイクを読む
【2025年2月分】
「コンゲツノハイク」から推しの1句を選んで200字評を投稿できる読者参加型コーナーです。今月は5名の皆様にご参加いただきました。ありがとうございます!
全身で枯木となつてゆく力
進藤剛至
「ホトトギス」
2025年3月号より
木が枯れてゆくのは、人間が年老いるように、力が弱った果ての姿だと思っていた。しかしこの句を読んで、枯木になるのにも力がいるのだと思い直した。「全身で」とあることで、ものすごい力であることも伝わってくる。「力」で終わるのも格好いい。生命が力を失ったようにも見える、冬という季節を違った視点で見せてくれる名句だ。〈水澄みて枯木のやうに眠りけり 潮見悠〉(「麒麟」2025年冬号)をわたしは思い出した。潮見さんの句を読んで感じた力強さと、進藤さんのこの句が呼応しているように感じた。
(千野千佳/「蒼海」)
コロッケがぞくぞく揚がる雪催
大山文子
「火星」
2025年2月号より
この「ぞくぞく」は「コロッケ」がつぎつぎと出来上がってゆく様子をあらわすと同時に、その光景を目の前にして何やら興奮している様をも仄めかしています。また「雪催」の空のもとで体が冷えてゆく「ぞくぞく」でもあるでしょう。ひとつの単語に複数の意味を同時に持たせる手法は、一句を窮屈にしてしまうことが多い印象ですが、掲句においては、その思い切りの良さによって成功していると思いました。
(加能雅臣/「河」)
沖止めの船に聖夜の灯りあり
卯月紫乃
「南風」
2025年3月号より
「沖止めの船」のある海は、クリスマスの喧騒から離れた街はずれと想像した。下五の「あり」は、ただ船があるよと言っているのではなく、あそこに船が「あった!」と、濃紺の景色にぽつんと灯る小さな「聖夜の灯り」の発見を、作者が喜んでいる「あり」なのだと読んだ。ともに海を眺める恋人に「ほら見て!」と、水平線を指差してみせているような。「聖夜」の季語が静かに、厳かに響いてくるだけではなく、作者や船の中の人々、そして水平線を超えたそれぞれの場所に、それぞれの聖夜があるのだと思わせてくれる一句。
(さざなみ葉)
釣り糸に夕日のあたる十二月
中山玄彦
「鷹」
2025年3月号より
いつもなら目立たない釣り糸が、夕日があたることで光り、はっきりと見える。弦楽器の弦を思わせる。季語「十二月」が華やかさをかもしだしており、深みのある音色が聴こえてきそうだ。冬の夕日は低い位置からあたり続ける。獲物がかかってほしいような、このまま釣り糸を揺らさずにいてほしいような。
釣り、一度もしたことないのだけれど、こんなに美しい景色も見られるのですね。
(弦石マキ/「蒼海」)
露草や更地になりし家の鍵
角田 球
「都市」
2025年2月号より
更地になった事情は分からぬ。かつてそこにあった生活を思う。しかし青々とした露草の茂る様子には、時の移ろう寂しさよりもむしろみずみずしい新たな生活への決意のようなものを感じる。
(小松敦/「海原」)
【次回の投稿のご案内】
◆応募締切=2025年2月28日(すでに締切)
*対象は原則として2025年1月中に発刊された俳句結社誌・同人誌です。刊行日が締切直後の場合は、ご相談ください。
◆配信予定=2025年3月5日
◆投稿先 以下のフォームからご投稿ください。
https://ws.formzu.net/dist/S21988499/