神保町に銀漢亭があったころ【第29回】広渡敬雄

俳句を愛する人達に乾杯!

広渡敬雄(「沖」同人「塔の会」幹事)

17年間の店歴を誇り、本年5月、皆に惜しまれつつ閉店した「銀漢亭」に、私が通い始めたのは平成17年頃だから開店2、3年目か。

その経緯はよく記憶していないが、ほどなく伊那男さんを中心とする超結社句会「火の会」に加えていただいた。それ以来、月1度の「火の会」に加え元の職場の仲間や大学の旧友との懇親の場所として、月2回は通っただろうか。

伊那男さんの勧める美酒と美味しい手料理に舌鼓を打ちつつ、そこで顔見知りになった俳人は、優に100名を越え、私の大切な俳句の財産にもなった。

元の職場の仲間や旧友とのおしゃべりもそこそこに、それら俳人と話し出すので、折角集まった仲間は、かなり当惑だったのかも知れない(笑)。

「火の会」会員は、師系も句風も違うが、実力俳人ばかりだったので、私の俳句領域を広め大いに研鑽の場ともなった。

平成24年8月29日の午後5時過ぎ、職場で会議中の私の携帯が鳴った。会議終了後掛け直すと、当時の鈴木忍編集長が角川俳句賞受賞を伝えてくれた。

喜びがこみ上げるというより疑心暗鬼だったが、驚いたことに、その二時間後に伊那男さんから「広渡さんが角川俳句賞受賞の報が飛びかっているが、本当ですか」とメールがあり、伊那男さんの早耳(笑)には驚かされた。

翌年1月の角川新年会(角川賞授賞式)並びに二次会祝賀会では、「火の会」の仲間も多数来ていただき、人生でも屈指の良き日となった。

「火の会」と言えば、テレビ番組「ブレバト」の中で最強と言われる村上健志(フルーツポンチ)を招き、ガシャンと言わせるつもりだったが……なかなかの手強い俳人だった(笑)。

加えて、桜の頃、盛夏、年末の恒例の銀漢亭の俳句会は、店内に入れないくらいの多数の俳人が参集してその熱気も今思うと懐かしい。

この3、4年は、毎年10月に倉田有希さんの尽力で「写真俳句展」を店内の壁面を利用して展示させてもらったのも良い思い出である。

(銀漢亭で開催されていた「俳句とコトノハ展」のようす)

銀漢亭が「俳人のメッカ」になり、地方の俳人も一度は訪ねてみたいと切望しているのも偏に伊那男さんの人柄に加え多くの俳人と会えるからでだろう。

証券会社、金融会社のサラリーマンからの自営業「酒場」への転身の一句、〈ボーナスを自分に出してみて淋し〉の伊那男さんのはにかみと人柄に惹かれて。

さらに、伊那男さんの俳句と信州伊那への熱い想いも加えたい。「銀漢」は創刊十年足らずで俳壇でも確固たる地位を築き、伊那男さんが紹介に力を入れている「伊那のほかいびと俳人 井上井月」も最近注目されている。

そうそう、私のビール注文に間髪を入れずにジョッキを持ってくれたマスター祐介君のいつも飄々淡々とした容貌も、銀漢亭の良い思い出でもある。

(2019年3月、「伊藤伊那男俳人協会賞、堀切克洋俳人協会新人賞祝賀会」の二次会)

昨年3月、学士会館で行われた「伊藤伊那男俳人協会賞、堀切克洋俳人協会新人賞祝賀会」の二次会、銀漢亭前の記念写真の皆の笑顔と熱気が今も脳裏に鮮やかだ。

銀漢亭と伊藤伊那男さん、そしてそこに集った俳句を愛する人達に乾杯!

(広渡さんの写真俳句!)


【執筆者プロフィール】
広渡敬雄(ひろわたり・たかお)
1951年福岡県生まれ。俳人協会会員。句集『遠賀川』『ライカ』(ふらんす堂)『間取図』(角川書店)。『脚注名句シリーズⅡ・5能村登四郎集』(共著)。2012年、年第58回角川俳句賞受賞。2017年、千葉県俳句大賞準賞。2017年7月より「俳壇」にて「日本の樹木」連載中。「沖」蒼芒集同人。「塔の会」幹事。



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