【結社推薦句】コンゲツノハイク【2023年8月分】


毎月が俳句年鑑! 前月に刊行された俳句結社誌・同人誌の最新号から「(最大)7句」を推薦いただき、掲出するコーナーです。このページの句のなかから、推しの一句を選んでご鑑賞いただく読者参加型コーナー「コンゲツノハイクを読む」、8月20日締切です。どなたでもご参加いただけますので、詳しくはリンク先をどうぞ。来月分のコンゲツノハイクについては、こちらのフォームからご投稿ください


コンゲツノハイク 2023年8月
(2023年7月刊行分)

今月の参加結社☞「秋草」「いには」「伊吹嶺」「稲」「円虹」「海原」「火星」「かつらぎ」「銀化」「銀漢」「雲の峰」「櫟」「澤」「磁石」「秋麗」「青山」「蒼海」「鷹」「橘」「田」「天穹」「南風」「濃美」「ホトトギス」「街」「松の花」「森の座」「雪華」


「秋草」(主宰=山口昭男)【2010年創刊・兵庫県神戸市】
<2023年8月号(通巻164号)>
蠢きしものにうごめく黒き蟻 山口昭男
どうしても水鉄砲に余る水 小鳥遊五月
一煎の鉄観音や白牡丹 水上ゆめ
菖蒲湯の葉先かはせばついてきて 高橋真美
昇進も蟻もそれほど気にならぬ 舘野まひろ
ウエハースのやうな約束花の午後 栗原和子
しわくちやの紙幣憲法記念の日 新井博子


「いには」(主宰=村上喜代子)【2005年創刊・千葉県八千代市】
<2023年8月号(通巻179号)>
ウポポイの地を打つ踊り青嶺立つ 村上喜代子 
花は葉に写真の中に逝きし人 追川信子
ゴールデンウイーク捕物帳を読む 杉村みゆき
立ち直るとき見ゆるもの浮いて来い 堀合優子
母の昭和吾の昭和や豆の飯 梅津紀子


「伊吹嶺」(主宰=河原地英武)【1998年1月創刊・愛知県名古屋市】
<2023年7月号(通巻301号)>
黄沙ふる都大路を清掃車 河原地英武
打ち損ねたり窯道の大百足 栗田やすし
黒猫のエジプト座り月朧 髙柳杜士
新じやがの皮のはじけて蒸しあがる 酒井とし子
競走馬たりし神馬へ若葉風 矢野孝子
場所取りの子の大の字や花見茣蓙 関根切子
木洩れ日や本に旧りたるパラフィン紙 渡辺慢房


「稲」(主宰=山田真砂年まさとし【2021年1月創刊】
<2023年7月号(通巻17号)>
夜桜へ一燈こぼす駐在所   北原昭子
誰も彼も何処もかしこも桜かな   小見戸 実
ながながと寝そべる犬よ猟期果つ   中村かりん
落椿転がりながら掃かれをり   大坪正美
不機嫌を見せ合ひし日や沈丁花   飛田小馬々
鷹鳩に化して頬張るポップコーン  上田信隆
おつぱいを飲んではうんち緑立つ  堀 潤子


「円虹」(主宰=山田佳乃)【1995年創刊・兵庫県神戸市】
<令和5年8月1日 344号>
山里に暮らし忙しく梨若葉  中前惇子
研ぎ汁に穀象二匹流れをり  大井清一郎
背伸びして杓を取る児や花まつり  若林柾矢
筍の鎧のごとき皮を剥く  石井ユキヱ
手作りの服を仕上げて子供の日  池沢みえ
リラの香や小瓶に移す化粧水  林仁子
飛鳥路や遺跡の裾の花すみれ  谷口知行


「海原」(代表=安西篤)【2018年創刊・千葉県市川市】
<2023年7・8月号(第50号)>
三月の光まみれの不在感 黒岡洋子
防衛論湿気るし蠅生れるし すずき穂波
微熱もすこし春愁ってくすぐったい 三世川浩司
春深しこれから生まれる好きなひと 有栖川蘭子
友達ではいられませんと春の文 井手ひとみ
夜桜の不可侵領域まで少し 福岡日向子
向日葵の正面に立つという勇気 村上舞香


「火星」(主宰=山尾玉藻)【1936年創刊・大阪府大阪市】
<2023年7月号(通巻1002号)>
麦秋を抜け来一輌車の真顔 山尾玉藻
春眠の中へこぎ出す泥の舟 蘭定かず子
葉桜の磴下り来し桶の稚魚 湯谷良
嵐電の行く手塞ぎし花吹雪 福盛孝明
鷹鳩と化しをさな子に歩み寄る 林範昭
兄の手を握れば柔し花の雨 高尾豊子
竹の葉の影しきり舞ふ春肥やし 坂口夫佐子


「かつらぎ」(主宰=森田純一郎)【1929年創刊・兵庫県宝塚市】
<2023年7月号(通巻1123号)>
七色の未来次々しやぼん玉 森田純一郎
花下微笑己が余命を知らぬげに 平田冬か
木洩れ日を滑らせてゆく春コート 村手圭子
目も耳も疎き白寿に亀鳴けり 田島もり
どう見ても反り加減なる紙雛 奥村恵子
山に行くごときリュックの新社員 荻野隆子
疲れたと喋るロボット四月馬鹿 木村由希子



銀漢(ぎんかん)」(主宰=伊藤伊那男(いなお)【2011年創刊・東京都千代田区】
<2023年8月号(通巻150号)>
浮く泡は亀鳴く数と思ひけり 伊藤伊那男
衣紋竹夕べの記憶吊したり   園部あづき
犠牲者のこゑをまた聞くお風入れ  戸矢一斗
しなの路の雨を聴きゐる洗ひ鯉  谷口いづみ
残る鴨広げる水尾の交はらず   三代川次郎
ソーダ水半分づつの減らぬまま  島谷高水
軽トラに曳かれ末社の御柱    坂下昭


「銀化」(主宰=中原道夫)【1998年創刊・東京都港区】
<2023年8月号(通巻299号)>
蝸牛這ふを見てゐるくらゐ暇 田口武
立て掛けし琴の裏より春蚊出づ 柴田奈美
いつまでも乾かぬ水着康生の忌 岡野美千代
先生の腹に着きけり水泳子 とみた環
柔らかき柱状節理心太 大年厨
傘ひらく梅雨前線押し上げて 下嶋四万歩
葉桜はさも咲いてゐるやうな顔 玉眞千歳


「雲の峰」(主宰=朝妻力)【1989年創刊・2001年結社化・大阪府茨木市】
<2023年7月号(通算385号)>
うばら咲く五島崩れの拷問地    酒井多加子
森青蛙天敵の待つ水中へ      播广 義春
間延びせる柱時計に春惜しむ   吉沢ふう子   
可飲みにつまめる土佐の初鰹    今村 雅史
夏潮の寄する岸辺に元寇碑     香椎みつゑ
春深し猫に欠伸をうつしけり    光本 弥観
麻酔より醒め遠雷を拾ふ耳     佐野 瑞季


「櫟」(主宰=江崎紀和子)【1993年創刊・愛媛県東温市】
<2023年7月号(通巻358号)>
言葉までざらついてくる黄砂かな 江崎紀和子
伸び縮み自在なる猫水温む 池川紀子
三角に大きく握る豆の飯 石丸千恵子
夜光虫見ゆる見えぬと闇の中 室展子
うららかやみそしほしやうゆとんこつも 黒木慶英
お通しの土筆良薬ほど苦し 藤本ちどり
予報士の棒の先より菜種梅雨 越智みつる


「澤」(主宰=小澤實)【2000年創刊・東京都杉並区】
<2023年7月号(通巻280号)>
年行くも戦火果てざる国いくつ 小澤實
田植弁当ニラレバ炒めど真ん中 たが啓子
新社員のネクタイ吸ひてシュレッダー 椎野順子
やあと来て彼の世の友や花の下 新澤 岳
新緑や剃髪終えし耳二片 深井十日
春草や足振つて脱ぐハイヒール 町田無鹿
これあれで通ずる会話春の雲 武田円笑


「秋麗」(主宰=藤田直子)【2009年創刊・神奈川県川崎市】
<2023年7月号(通巻154号)>
ゆづりあふメイアップルの花の径 藤田直子
炎天下船の荷となる牛を押す 土橋清志
降り積むに昼も夜もなし柿の花 田島三閒
薔薇散るやラ行は舌を踊らせて 伊藤美紀子
信心は大山木の花を越ゆ 常木由利子
葛餅の口ごもるには都合良く 藤井南帆
小鯛ほどになりて金魚の孤独かな 高原みえこ


青山せいざん」(主宰=しなだしん)【1982年創刊・神奈川県横浜市】
<2023年7月号(通巻488号)>
胸に手に万の螢と螢狩    山崎ひさを
絶景の山河に蟻のゆき交へる  しなだしん
釣鐘人参オーレリアンの庭に  井越芳子
鐘の音のうなり出したる広島忌  坂東文子
三月の空見えてゐる会議室  ローバック恵子
浅き春術痕をまた摩りゐる   佐藤敏枝
「春ですよ」一人住まひの一人言  合田睦子


蒼海そうかい」(主宰=堀本裕樹)【2018年創刊・東京都新宿区】
<20号>
じやんけんや手袋の柄ぐつと出て つしまいくこ
凧あげの父を追ふ子や母も追ふ 曲風彦
芽キャベツの地球のやうに浮くシチュー 小谷由果
久闊を叙する人をる火事見かな 中村想吉
再生の留守電咳きに咳くばかり 板坂壽一
彫刻のやうなカーテン冬館 土屋幸代
痩せたるが豊かなる尾の狐ゆく 楠木文鳥


「鷹俳句会」(主宰=小川軽舟)【1961年創刊・東京都千代田区】
<2023年8月号>
梅雨近き雲に白山蟠(わだかま)る 小川軽舟
竹を打つ雨みどりなり丈山忌 梅野幸子
雑踏をアオザイの人白日傘  林るい子
新宿の十坪に重機梅雨の月  辻和香子
毛蚕掃くや雨雲の湧く四囲の山 中村哲乎
万緑や一歩一歩に血の目覚む  奥田遙 
春の叙勲友の名小さくありたるよ 茂木とみお 



たちばな」(主宰=佐怒賀直美)【1978年創刊・埼玉県久喜市】
<2023年8月号(通巻548号)>
てふてふのかへりは迷ふ夕べかな 山口風樹
胞衣塚は割石十個緑さす 樋口保
菖蒲湯を小分けに夫の足洗ふ 水島昌恵
夕風や棚田を歩む祭の子 松井努
折紙の折目をなぞる子供の日 下田田鶴子
父祖拓く棚田をすべるあめんぼう 小林弘和
若葉風机上に機関車の絵本 羽谷一美


(でん)」(主宰=水田光雄)【2003年創刊・千葉県市川市】
<2023年8月号(通巻245号)>
フランス座ロック座過ぎて針供養 仲 栄司
この街の中央銀座初つばめ ゆめにこか
よく光るカレーライスやうららけし 草子洗
草若葉海へつながる駐車場 笠原小百合
デラシネの海遙かなり通し鴨 伊東慶子
大八洲いづこも桜さくらかな 兼行美栄
さくら咲く猫も鴉も狂ひ出し 髙橋一歩


天穹(てんきゅう)」(主宰=屋内修一)【1998年創刊・東京都渋谷区】
<2023年7月号(通巻305号)>
ジーンズの膝の丸見え土筆摘む 山口ひろ女
自販機に故郷の水風光る 青木遵子
アルバムに手形足形子供の日 久保田雅久
ヴィーナスと居残る画室春灯 田嶋しゅうじ
花筵みんなこの世の途中下車 藤栄誠治郎
レコード店に探す青春春夕焼 前川尚子
水温む手波で急かす笹の舟 坂口明子


南風(なんぷう)」(主宰=村上鞆彦(ともひこ)【1933年創刊・東京都葛飾区】
<2023年8月号(通巻957号)>
夏つばめ教室に席ひとつ増え 岡原美智子
更衣花器のまはりに花粉散り 若林哲哉
巣の縁に倚つて眼を閉づ燕の子 新治 功
夏場所やいきいき動く尻ゑくぼ 市原みお
木蓮の大き青葉の風雨かな 板倉ケンタ
とりこぼす実梅は谷に落ちゆけり 小山勝嗣
半分は注釈の書よ星涼し ばんかおり



「濃美」(主宰=渡辺純枝)【2009年創刊・岐阜県岐阜市】
<2023年8月号(通巻第173号)>
らふそくのやうな灯台鑑真忌 渡辺純枝
骨折す春の女神に打つ飛ばされ 亀井燿子
マーガレット白し青春の日遠し 花村秀子
花束のリボンをほどく蝶の昼 浅野幸子
かたまりて猫の子上も下もなく 後藤五百合
一粒もこぼせぬ宝種下し 加藤弥生
浮苗を戻す手植ゑの田一枚 福谷龍彦


「ホトトギス」(主宰=稲畑廣太郎)【1897年創刊・東京都千代田区】
<2023年8月号(通巻1520号)>
花林檎稜線模糊と津軽富士 稲畑廣太郎 
春雷や襁褓替へつつ歌ひつつ  椋麻里子 
どこまでも花どこまでも雨の音 岸田祐子
三椏の花無造作で正確で  西尾浩子
一粒に万の夢売る種物屋  塚本武州
虚子訪ね見知らぬ街の青き踏む 荒井桂子
新しさとは一瞬に入学す 今橋周子


「街」(主宰=今井聖)【1996年創刊・神奈川県横浜市】
<NO.162>
梅雨といふ大きな鱏の影に入る   今井聖
薔薇を買ふ故人が貯めしポイントで 江口瑠里
青梅雨や灯さぬ家の笑ひ声     太田うさぎ
みんな笑顔の不穏なクラス更衣   金丸和代
ポリバケツがぼと泉に入れにけり  黒岩徳将
新入社員ゴスペルを歌ひ出す    竹内宗一郎
白日傘妻にも母親にもなれず    やまねよしこ


「松の花」(主宰=松尾隆信たかのぶ【1998年創刊・神奈川県平塚市】
<2023年7月号(通巻307号)>
大いなる亀浮かびをる蜃気楼 松尾隆信
しやぼん玉亀の背中に割れにけり 十亀健一
イヤリングは失ふものよ花の冷 森脇由美子
今日百歳シャネル五番と春の薔薇 秋山迪子
花疲れ身に着くものを先づ外す 石川暉子
補聴器と眼鏡の遺品花曇 森よしこ
ゆく春の子の挨拶や変声期 粟生せつ子


「森の座」(代表=横澤放川)【2017年創刊・東京都文京区】
<2023年7月号>
雲の峰こころ動きて眉目動く 横澤放川
引き抜けば根張りを密に春の草 矢須恵由
春暁のしじまのどこか懐しく 吉次薫
風ときに鳥の声あげ雁供養 敦賀恵子
蘆焼やドローンは青く点滅す 光井加代子
ヒロシマへ還れましたか花菜風 石田福子
初音聴く命拾ひし夫と聴く 伊藤亜紀


「雪華」(主宰=橋本喜夫)【1978年創刊・北海道旭川市】
<2023年8月号>
ガラスの白鳥(スワン)水無月の空へ翔ぶ 三国眞澄
仕舞ひ湯のぬるさに溺れさうな夏至 柊月子
かまきりの獲物見据ゑるとき擬態 長谷川忠臣
熊出たと長くなりたる立ち話 井口寿美子
ハンモック臨死体験でもするか 星出航太郎
竹迷日先を行くのはいつも死者 まるも哲世
死ぬためのものは薬と呼ばず梅雨 髙橋亜紀彦



【次回の投稿のご案内】

◆応募締切=2023年7月31日
*対象は原則として2023年7月中に発刊された俳句結社誌・同人誌です。刊行日が締切直後の場合は、ご相談ください

◆配信予定=2023年8月5日

◆投稿先
以下のフォームからご投稿ください。
https://ws.formzu.net/dist/S21988499/



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