【夏の季語=晩夏(7月)】合歓の花
ねむのはな。6ー7月ごろ、独特のかたちの花を咲かせる。
夜になると小葉が閉じて垂れ下がる就眠運動を行うことからの、「眠る木=ネムノキ」というネーミングである。
漢字名の「合歓木」は、葉が合うところからの名前で、中国においてネムノキが夫婦円満の象徴とされている。
【合歓の花(上五)】
合歓の花底なき淵の底あかり 中川宋淵
合歓の花がつづる旅路や子の睫毛 細見綾子
合歓の花夕べは淡いひかり射す 林田紀音夫
合歓の花君と別れてうろつくよ 金子兜太
合歓の花眉毛濃ゆくて佐渡に住む 斉藤夏風
合歓の花牧の外れに来て逢へり 太田土男
合歓の花ぽつんぽつんと夢滲む 遠藤由樹子
合歓の花檻に舌出す大蜥蜴 橋本 直
合歓の花雨が引つ搔き傷のごと 北大路翼
合歓の花ゆふぐれ僕が僕を泣かす 若林哲哉
【合歓の花(中七)】
沖の荒れ合歓はねむりの中にゐて 桂信子
愛渇く遠く合歓咲き匂へるや 小林康治
【合歓の花(下五)】
まぐはひの空を流るる合歓の花 原田喬
旅仕度のシャツハンカチや合歓の花 細見綾子
ほほゑみといふしづけさに合歓の花 坂本宮尾
呼鈴を押してしばらく合歓の花 西村和子
まひるまの波の音聴く合歓の花 西村和子
奥山に旅寝かさねて合歓の花 田中裕明
咆哮を忘れし虎や合歓の花 飯田冬眞
ときじくの鰡のあぎとふ合歓の花 安里琉太
【その他の季語と】
から梅雨や水面もとびて合歓の禽 飯田蛇笏
合歓の葉のねむれる花や櫻桃忌 石川桂郎