ハイクノミカタ

花言葉なき一生を水中花 杉阪大和【季語=水中花(夏)】

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: eye-2horikiri--1024x538.png

花言葉なき一生を水中花 

杉阪大和


「水中花」というと、どうしてもフェイクで安っぽいイメージがつきまとうが、一生枯れることのないその徒花にただよう淋しさを、掲句はうつくしく詠みとめている。おそらく、去年も、一昨年もテーブルの同じ場所に、同じ角度で、同じ色で飾られていたのだ。来年も、再来年もきっとそう。おそらく、その平凡さと変化の乏しさに作者が自分に重ねている部分もあり、それゆえにいくばくかの反骨心というか、水中花が逆に花言葉を獲得してしまいそうなポジティブさまで、感じられる。第二句集『思郷』(2019)より。



【セクト・ポクリット管理人より読者のみなさまへ】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

関連記事

  1. 蜃気楼博士ばかりが現れし 阪西敦子【季語=蜃気楼(春)】
  2. 三角形の 黒の物体の 裏側の雨 富沢赤黄男
  3. 聞えない耳なら石榴ぶらさげよ 金原まさ子【季語=石榴(秋)】
  4. いけにえにフリルがあって恥ずかしい 暮田真名
  5. さざなみのかがやけるとき鳥の恋 北川美美【季語=鳥の恋(春)】
  6. 麦真青電柱脚を失へる 土岐錬太郎【季語=青麦(夏)】
  7. 水底に届かぬ雪の白さかな 蜂谷一人【季語=雪(冬)】
  8. ビール買ふ紙幣をにぎりて人かぞへ 京極杞陽【季語=ビール(夏)】…

おすすめ記事

  1. 【連載】「野崎海芋のたべる歳時記」 ブリニとタラマ
  2. 水喧嘩恋のもつれも加はりて 相島虚吼【季語=水喧嘩(夏)】
  3. 【秋の季語】秋刀魚
  4. 雛納めせし日人形持ち歩く 千原草之【季語=雛納(春)】
  5. 【新年の季語】初日記
  6. 【書評】『シリーズ自句自解Ⅱベスト100 大牧広』(ふらんす堂、2017年)
  7. 「体育+俳句」【第1回】菊田一平+野球
  8. デパートの旗ひらひらと火事の雲 横山白虹【季語=火事(冬)】
  9. へうたんも髭の男もわれのもの 岩永佐保【季語=瓢箪(秋)】
  10. 【夏の季語】涼しい

Pickup記事

  1. 酔うて泣きデザートを食ひ年忘 岸本尚毅【季語=年忘(冬)】
  2. 神保町に銀漢亭があったころ【第20回】竹内宗一郎
  3. 祈るべき天と思えど天の病む 石牟礼道子
  4. 趣味と写真と、ときどき俳句と【#08】書きものとガムラン
  5. 麦藁を束ねる足をあてにけり   奈良鹿郎【季語=麦藁(夏)】
  6. 秋櫻子の足あと【第1回】谷岡健彦
  7. 【冬の季語】梟
  8. 【冬の季語】水仙
  9. 【夏の季語】蜘蛛
  10. 誰をおもひかくもやさしき雛の眉 加藤三七子【季語=雛(春)】
PAGE TOP