南瓜煮る明日は明後日を待つて 黒岩徳将【季語=南瓜】


南瓜煮る明日は明後日を待つて

黒岩徳将

 夕暮れの台所は「ひとり会議室」となる。洗ったり刻んだりしながら胸中で今日を悔いたり、不満をなだめすかしたり、嬉しかったことを反芻する。はたまた突然の妄想をしたりも。
 「南瓜煮る明日は明後日を待って」は、具体的に明後日に楽しいことがあるから待っています、ということではない。だとすれば「明後日」だけを強調すれば良い。「明日」「明後日」を置き石のように並べることで続いていく日々のリズムが視覚化される。
 明日の今ごろも、今日と同じように明日を考えるだろう。作者はマンネリではなく、そこに平穏、快適さを感じているはず。
 なぜなら煮ているのが南瓜だから。重くて固い南瓜は買うのも切るのも結構億劫だ。ちゃんと料理しようという意識がないと手を出さない野菜なのである。さらに南瓜の煮物単体ではご飯のお供として弱いので他にも一、二品作ることになる。包丁を持ち日々を生きるポテンシャルがあらわれている。
 南瓜を煮ているうちは大丈夫。これがレトルトをチンだったら、「今日を生き抜くので精一杯」となる。

(西山ゆりこ)


【執筆者プロフィール】
西山ゆりこ(にしやま・ゆりこ)
1977年神奈川県生まれ。「駒草」同人。俳人協会会員。
第10回星野立子新人賞受賞。句集『ゴールデンウィーク』『錨(アンカー)』。



第10回星野立子新人賞を受賞した若手俳人による注目の第二句集!
◆自選10句
十代の首筋をもて海芋咲く
遠くより視線を戻す暑さかな
八月や果実のやうに嬰量る
バックネット裏の母達風光る
うれしげにさらはれてゆく村芝居
とんでくる拳のやうな寒さかな
白障子手紙の中のしづかなり
手を高くエスカレーターより御慶
寺山忌煙草のけむり無き街に
うつむくといふは鳥にも春惜しむ


20歳から俳句をはじめ、現在40歳。夢、希望、孤独、挫折をうたい、やがて母となりゆく作者。 俳人阿部みどり女の「写生に始まり、写生に終わる」の精神を受け継ぎながらも、その俳句は写生の域を超えてリアルな言葉で読者の胸に迫ってくる。女として、母として、自分を取り巻く世界をかくも生き生きとうたい上げ、感性を光らせる280句を収録。伝統に新風を吹き込む精鋭作家、待望の第一句集!


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