「むじな」10周年記念大会のこと

【木曜日】は2か月交代で〈大学俳句会〉のみなさんにご執筆いただいています。「北大俳句会えぞりす」からのバトンが渡ったのは福島大学俳句会。第3回は石川尖晶さんです。東北若手俳句作品集のむじなの10周年記念大会のこと。


「むじな」10周年記念大会のこと

石川尖晶(福島大学俳句会・「むじな」)


 大学生になり、友人の勧めで俳句を始めたが、それまでは俳句とは無縁の人生を歩んでいた。そのためおそらく私が最初に詠んだ句は拙いことこの上なかっただろう。その後も季語を一句の中で二つ以上使ってしまったり、自分のイメージに合うような句が詠めなかったりして、戸惑ったものだった。しかし福島大学俳句会で吟行を行うなどして、季語に実際に触れることで少しづつ季語や「俳句を詠もう」と思って見える、普段とは異なって見える世界の輪郭が鮮明になっていった。
 そこで9月20日、21日で東北若手俳句作品集のむじなの10周年記念大会にお邪魔させていただき、初めての福島大学俳句会会員以外の俳人との交流を通して非常に充実した2日間となった。宮城県で開催され、1日目は七ヶ浜で吟行しその後移動して句会を行った。2日目はフェリーに乗って寒風沢に移動し、吟行した後にむじな十周年記念大会を行った。

街灯は残れる海猫の台座かな ―むじな十周年記念大会2日目 鬱金―
 上記は2日目の記念大会で私が特選として選んだ、うこん氏による句である。大会当日は天候に恵まれず、荒波で乗ってきたフェリーが大きく揺れるほどであった。しかし寒風沢では猫が多く生息しており、鳥も何匹か見受けられた。「残れる海猫」とは天気が荒れていたとしても、寒風沢に残り続ける海猫を指しているのではと感じ、「街灯」を雨に濡れるのも厭わず海猫がとまる「台座」としている所に惹かれた。台座とすることで「街灯にとまっている海猫」が一つの風景として完成されているように感じた。また、鳥の中でも海「猫」を選んだことは上記の通り寒風沢に到着してすぐに猫を数匹見かけたことからではないか、と推察した。私は諸事情で二日目の吟行には参加できなかったが、この句は実際にその風景を見ていない者にも十分俳人が吟行で何に触れてきたかが、想像しやすい一句であった。


雪解は正座を崩すようにして
―むじな十周年2日目色紙交換 周志―
 上記は2日目の記念大会内で行ったそれぞれの代表句を書いた色紙交換で、私が頂いた周志氏による一句である。周志氏がこの句を詠んだ時に居合わせた訳ではなかったが、雪が解けて春が来ようとしている状況を「正座を崩すようにして」と表現していることに雪によるこわばりからの解放を感じた。また、正座を崩すと大半の人は体のどこかしらがしばらく痺れるだろう。雪も解けはしても、しばらくは通行の妨げになったり、解けることによって水分を吸って重くなり屋根が壊れたりするなど、少なからず被害が出てしまう。それを「正座を崩すようにして」と表現したことに、舌を巻くばかりである。


 福島大学俳句会以外の句会に出たこと自体初めてであったが、上記の2句以外にも素晴らしい句と沢山出会うことができて、非常に楽しいひと時を過ごさせてもらった。是非ともこの経験をこれから詠む俳句にも活かしていきたい所存である。
 大学に入学して初めて触れた俳句の世界だったが、魅力に溢れる日本文学の一つであることをひしひしと感じている。趣味で幼いころから読んできた小説とは全く違う方法で、自分を伝えることができる俳句の世界にこれからもどっぷり浸かって大学生活を送っていきたいと思っている。特に夏目漱石や正岡子規といった文豪の俳句にたくさん触れることを目標にし俳句への見聞を広げることもしていきたい。自分への理解が深まり、より一層生活が豊かにしてくれた俳句には感謝の念を示す一方である。またその他にも私をはじめ大学から始めた人たちにとっても、こんなに楽しんで俳句を続けることができる場を提供してくれた福島大学俳句会代表への感謝の気持ちを忘れずに、これからも邁進していきたい所存である。私はまだ自分の詠む句の作風をそこまで理解していないが、詠みたい世界を明確化することも目標にしつつ、俳句を詠むこと自体を楽しんでこれからも福島大学俳句会の活動を続けていきたい。最後に福島大学俳句会とむじなの会員の面々に感謝の意を表わして私のエッセイを閉じようと思う。

(石川尖晶)


【サークルプロフィール】
福島大学俳句会
2025年11月発足。立ち上げ人代表・金光舞、副代表・石川尖晶、顧問・高橋由貴准教授。毎週金曜日の活動。月に一度は季語を体感することを大切にしており、5月・しゃぼん大会、6月・ゼリーを食べる会、7月・流しそうめん大会を実施。9月に実施した一泊二日の夏合宿では句会が3時間に及びたいへんな盛り上がりをみせた。3ヶ月に一回程度のペースで吟行も行っている。さらに、福島大学の出張講座のなかに初心者向け俳句講座を設けており、湯本や飯坂、楢葉など福島県全域を対象に俳句を教える活動にも取り組んでいる。インスタグラムでは毎日季語を紹介する投稿を続けており、ニッチな人気を誇る。
 現在、会員は17名であり、福島大学に通う学生に限定し、会員を募集中。今年11月7日には福島大学俳句会機関誌「栖(すみか)」の創刊号が刊行予定となっており、40名近くが関わる大きなプロジェクトになっている。


【執筆者プロフィール】
石川尖晶(いしかわ・せんしょう)
平成18年生まれ、新潟県出身。福島大学俳句会副代表。俳誌「むじな」所属。元々小説を書いていたが、大学入学後に友人に勧められて作句を開始。大学では近現代文学を専攻。


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