【木曜日】は2か月交代で〈大学俳句会〉のみなさんにご執筆いただいています。「北大俳句会えぞりす」からのバトンが渡ったのは福島大学俳句会。第4回は愛海さんです。

自殺願望、メラメラと燃える火がある
住宅顕信
愛海(福島大学俳句会)
俳句・住宅顕信、版画・松林誠『ずぶぬれて犬ころ』。
この世のいろんなものに寄り添う孤独を感じました。それは、私の背中にぴったりとくっついている。あるいは、肩に顎を乗せてなにか言いたげな顔を向けている。孤独が寄り添ってくれているなら、私はひとりじゃない!冷たさのなかにある柔らかさと熱に触れて、じゅわっと音を立てるような幸福感に包まれました。ゴミみたいな感情も、綺麗だって思っていいんだ!そういう句が常に私を取り巻いていると思えたし、常にそうあって欲しいと思えました。
〈窓に映る顔が春になれない〉
自分だけ冬に取り残されているさみしさを感じた。世界はもう本当に春なのに、私だけずっと置いていかれてて、私だけがこんなにも春を望んでいるって、あまりにも愉快だ。
〈若さとはこんな淋しい春なのか〉
若さという活き活きした言葉に淋しさを結びつける面白さ。若いからこそ感じうるセンチメンタルな春。
〈螢光灯の音のみの静けさにおる〉
ひとりで歩く夜の冷たい風や深い闇、今世界にはもしかして私だけしかいないんじゃないかな。螢光灯はなんだかいつもよりぼんやりしていて、冷たくて、それが少し寂しくて、なんだか嬉しい気持ちになる。
〈待ちくたびれた傘が立っている〉
ねえ、あなたは誰を待っているの?相手は来るのか来ないのか、期待半分諦め半分みたいな、ざらざらした感情が雨に濡れて萎れる、溶ける、消える。
〈淋しさきしませて雨上がりのブランコ〉
ブランコのギィという音に淋しさを思い浮かべるのは、たぶん、隣のブランコがもう揺れてないから。湿気った公園の土の匂いを思いきり鼻で吸って、吐く。ひとりでブランコを漕ぐ雨上がり、昼下がり。
〈許されたシャワーが朝の虹となる〉
こんにちは。私は今、とある病棟にいます。数日に1回のすごく短いシャワーの時間と、窓の外の景色が私の幸せです。その時間には、私のまわりには艶やかな虹が咲き誇ります。
〈自殺願望、メラメラと燃える火がある〉
自殺願望を持つって生きていることの証明だと思う!めちゃくちゃ生きている、私の細胞が全力で燃え上がっている!メラメラ燃え上がるような願望があるほどとても生きていると思う、生を感じろ!
〈お茶をついでもらう私がいっぱいになる〉
気遣いありがとうって朗らかに笑う横顔が思い浮かぶ。嬉しさ気恥ずかしさもどかしさなどなど可愛い気持ちが詰め込まれてるように思う。幸せですね。
(愛海)
【サークルプロフィール】
福島大学俳句会
2025年11月発足。立ち上げ人代表・金光舞、副代表・石川尖晶、顧問・高橋由貴准教授。毎週金曜日の活動。月に一度は季語を体感することを大切にしており、5月・しゃぼん大会、6月・ゼリーを食べる会、7月・流しそうめん大会を実施。9月に実施した一泊二日の夏合宿では句会が3時間に及びたいへんな盛り上がりをみせた。3ヶ月に一回程度のペースで吟行も行っている。さらに、福島大学の出張講座のなかに初心者向け俳句講座を設けており、湯本や飯坂、楢葉など福島県全域を対象に俳句を教える活動にも取り組んでいる。インスタグラムでは毎日季語を紹介する投稿を続けており、ニッチな人気を誇る。
現在、会員は17名であり、福島大学に通う学生に限定し、会員を募集中。今年11月7日には福島大学俳句会機関誌「栖(すみか)」の創刊号が刊行予定となっており、40名近くが関わる大きなプロジェクトになっている。
【執筆者プロフィール】
愛海(あみ)
平成19年生まれ、福島県出身。福島大学人間発達文化学類1年。福島大学俳句会所属。はじめて俳句の本を読む、ということで代表にすすめられて読んだのがこの版画集。この連載は、「ちゃんと見ていろんなこと考えて」みる試み。
俳句・住宅顕信、版画・松林誠『ずぶぬれて犬ころ』
(中央公論新社、2002年)定価 1430円
ISBN-13 : 978-4120032721
