【夏の季語=三夏(5月〜7月)】明易
夏に日が伸びてくると、暗い時間は少なく感じられるが、とくにすぐに夜明けになってしまうことを「明易」という。
ことばで言い表される。
俳句ではいくつもの有名句があるが、しかし何といっても、
短夜や乳ぜり泣く児を須可捨焉乎(すてつちまをか) 竹下しづの女
が群を抜いているか。
名詞としてではなく、「明易く」「明易し」「明易き」などと副詞や形容詞としても用いられることがある。
【明易(上五)】
明易や花鳥諷詠南無阿弥陀 高濱虚子
明易し姉のくらしも略わかり 京極杞陽
明易き欅にしるす生死かな 加藤楸邨
明易の水に映りて枯れし松 波多野爽波
明易や書架にむかしのでかめろん 伊藤白潮
明易き指組みほぐす胸の上 岡本眸
明易き絶滅鳥類図鑑かな 矢島渚男
明易し白く裂かるる鮫の腹 菊田一平
明易の情欲である大絵皿 渡辺誠一郎
明易や物置けさうな凪の海 岸本尚毅
明易のひかりが池に凝りけり 森賀まり
明易や岳父の訃報実父より 前北かおる
明易や吊れば滴るネガフィルム 佐藤文香
明易や古墳と知らず昇りつめ 黒岩徳将
【明易(中七)】
しなやかに明易き山ありにけり 廣瀬直人
【明易(下五)】
につぽん語ぽるとがる語や明易し 高野素十
白襖まことに白し明易き 山口青邨
旧姓で呼ばるる目覚め明易き 宮城雅子
ぬいぐるみに肉球のあり明易し 及川真梨子