【冬の季語=三冬(11〜1月)】冬日
冬の日差しのこと。「冬の日」とも。
国語辞書では一般に「ふゆび」と読まれるが、虚子がつくった『新歳時記』では「冬の日」の傍題として「ふゆひ」と濁らずに訓む。虚子編以外の歳時記も「ふゆひ」と濁らずに読む。
【冬日(上五)】
冬日影人の生死にかかはらず 飯田蛇笏
冬日の車窓(まど)に朱きあかるき耳持つ人々 篠原梵
冬日中牛の骨格あふれをり 岡井省二
【冬日(中七)】
旗のごとなびく冬日をふと見たり 高浜虚子
地球一万余回転冬日にこにこ 高浜虚子
母の日のこの日の冬日なつかしむ 高野素十
大仏の冬日は山に移りけり 星野立子
大阪の冬日やビルにひつかかり 京極杞陽
空港の青き冬日に人あゆむ 西東三鬼
砂町も古りぬ冬日に温められ 石田波郷
その日ただ海の冬日と思ひしのみ 飯田龍太
野は無人きのふ冬日が差しました 柿本多映
猫が知る冬日もつとも濃きところ 伊藤伊那男
ところどころで顔に冬日のあたる道 佐藤文香
【冬日(下五)】
大仏に袈裟掛にある冬日かな 小林一茶
智恵の輪にさしこんでをる冬日かな 京極杞陽
わが頬を燃やし励めと冬日あり 深見けん二
先生ありがとうございました冬日ひとつ 池田澄子
かあさんと墓を呼ぶ父冬日差す 小川軽舟
巨き絵の次も大きな絵や冬日 長嶋有
昼過ぎのやや頼もしき冬日かな 岩田由美
トイレタンクの上の造花や冬日差す 榮 猿丸