【夏の季語】蕗

【夏の季語=初夏(5月)】蕗

春から初夏にかけて旬を迎える。特有の苦味とシャキシャキとした食感が魅力。

愛知県の伝統野菜と古くから親しまれている愛知早生(尾張ふき)が最も有名で、みずみずしさと柔らかさが特長。

北海道足寄町でしか採れないラワンぶきなど、多様な品種が存在し、野生種を含めると約200種類の品種があるとされている。

季語としては大きく育った「蕗の葉」などを詠む場合と、収穫された「蕗の茎」を詠む場合に大別される。

シンプルに煮物にしたり「伽羅蕗」にしたりして食す。「蕗の薹」「蕗味噌」などは春の季語。

俳句結社「蕗」は、師匠・高野素十の勧めで倉田紘文(1940年-2014年)が1972年、32歳のときに創刊・主宰した。


【蕗(上五)】
蕗の葉も老い交りたり草茂る 高濱虚子
蕗苦しけふ陥つるなり伯林は 石田波郷
蕗ゆでて平生心に戻りけり 細見綾子
蕗の葉の大きくなりて重なりし 倉田紘文
蕗むいていち日むいてゐるやうな 山尾玉藻
煮し蕗の透きとほりたり茎の虚 小澤實

【蕗(中七)】
配給の蕗をゆさゆさ提げ帰る 山口誓子
ひさびさに糸ひく蕗を食べにけり 山口誓子
あをあをと蕗の煮えたる喪中かな 細川加賀
黄昏や蕗茹でる水すぐ沸きて 岸田稚魚
償ひに似て蕗を剥く手許かな 小林康治
裏口を蕗に攻められ母ひとり 宮坂静生
近江みち蕗をいただく空也あり 筑紫磐井

【蕗(下五)】
ふるさとに母を置き去り蕗の雨 手塚美佐



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