【冬の季語=三冬(11月〜1月)】梟
留鳥だから四季を問わないが、冬の夜に聞く鳴き声は侘しくもあり凄みもあるので、冬の季語として定まったらしい。歴史的仮名遣いだと「ふくろふ」。
「梟の羹」や「梟の炙」は、中国の宮廷にかかわる端午の日の慣習。梟は悪鳥なので羹にして群臣に賜い、もってその悪を懲らしめるというものだが、こちらは夏の(きわめてマイナーな)季語である。
【梟(上五)】
梟淋し人の如くに瞑る時 原石鼎
梟の憤りし貌の観られたる 加藤楸邨
梟に水のはげしき山の闇 鷲谷七菜子
梟がふはりと闇を動かしぬ 米沢吾亦紅
梟は夜のあそびをしてをりぬ 今井杏太郎
梟やわが享年を推しはかる 宇多喜代子
梟をみにゆき一人帰り来ず 宇多喜代子
梟と最終列車に乗り込みぬ 宇多喜代子
梟の目にうつるものみな歪 宇多喜代子
梟の笛吹いて梟より淋し 矢島渚男
梟が啼く胞衣塚を過ぎたれば 黒田杏子
梟や記紀の山々とはの闇 齋藤愼爾
梟に人事不省の響きあり 櫂未知子
梟を飼ふ高層を生きるため 櫂未知子
梟の身に軸のありこちら向く しなだしん
梟の口を開きて声もなく 岸本尚毅
【梟(中七)】
山の宿梟啼いてめし遅し 高濱虚子
「ほう」の外梟を呼ぶ声知らず 加藤楸邨
これ着ると梟が啼くめくら縞 飯島晴子
顔も目もすべて梟まろまろと 森田峠
鷹女ならず白梟のとぶおどろ 依田明倫
旅おえてまた梟に近く寝る 宇多喜代子
百夜来し梟に遣るものの無し 大石悦子
雪降り来るか梟の目瞑れば 橋本榮治
己を視むと梟の顔廻す 大島雄作
【梟(下五)】
血を盗つてたつぷり盗つて梟来 筑紫磐井
さびしさの絶対量を問ふふくろふ 夏井いつき
血を分けし者の寝息と梟と 遠藤由樹子