季語・歳時記

【春の季語】春の夜

【春の季語=三春(2月〜4月)】春の夜

春の夜は「朧夜」になることも多く、ぼんやりと、夢うつつな印象があります。

「春の夜」は「はるのよ」と四音で読むのがクラシック。日常語に近づけると「はるのよる」と五音になります。漢語的な言い回しでは「春夜」、とっぷりと暮れた夜の時間帯は「夜半の春」と呼び分けることもあります。

「春の夜」の俳句といえば、久保田万太郎の〈時計屋の時計春の夜どれがほんと〉がとっても有名。

春の夜の短歌といえば、〈ハーブティーにハーブ煮えつつ春の夜の嘘つきはどらえもんのはじまり〉(穂村弘)。作者は、「春の夜の感覚は、ドラえもんのポケットからは何でも出てくるというその全能感」と語っています(穂村弘、山田航『世界中が夕焼け 穂村弘の短歌の秘密』)。


【春の夜(上五)】
春の夜の汝が呱々の聲いまも新た 中村草田男
春の夜や女に飲ます陀羅尼助 川端茅舎
春の夜のつめたき掌なりかさねおく 長谷川素逝
春の夜の氷の国の手鞠唄 飯田龍太
春の夜や浮世絵の虚と実の間 杉良介
春の夜の五右衛門風呂を召せといふ 神蔵 器
春の夜や皿洗はれて重ねられ 川崎展宏
春の夜の細螺の遊きりもなし 大石悦子
春の夜や犬の寝息とアイロンと 後藤雅文
春の夜のおもりのような腕時計 津田このみ
春の夜や朽ちてゆくとは匂ふこと ふけとしこ
春の夜の子の音読を聴いてをり 上野山明子
春の夜や湯船に女煙草吸ふ 榮猿丸
春の夜の絵本の山を崩し読む 甲斐のぞみ

【春の夜(中七)】
時計屋の時計春の夜どれがほんと 久保田万太郎
キャベジンや春の夜に浮く観覧車 藤田俊

【春の夜(下五)】
地球より外に出でたし春の夜は 鳥居三朗


【セクト・ポクリット管理人より読者のみなさまへ】



  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

関連記事

  1. 【春の季語】朧
  2. 【夏の季語】夏の蝶
  3. 【新年の季語】歌留多
  4. 【冬の季語】クリスマスカード
  5. 【春の季語】春雪
  6. 【冬の季語】マスク
  7. 【冬の季語】鼻水
  8. 【秋の季語】穴惑

おすすめ記事

  1. 【秋の季語】椎茸
  2. 鶏たちにカンナは見えぬかもしれぬ 渡辺白泉【季語=カンナ(秋)】
  3. 服脱ぎてサンタクロースになるところ 堀切克洋【季語=サンタクロース(冬)】
  4. 【春の季語】鷹鳩と化す
  5. 【結社推薦句】コンゲツノハイク【2024年4月分】
  6. 【冬の季語】梟
  7. 【夏の季語】髪洗う
  8. なだらかな坂数へ日のとある日の 太田うさぎ【季語=数へ日(冬)】
  9. 【結社推薦句】コンゲツノハイク【2022年8月分】
  10. 【冬の季語】大年

Pickup記事

  1. 茎石に煤をもれ来る霰かな 山本村家【季語=茎石(冬)】
  2. 【結社推薦句】コンゲツノハイク【2021年7月分】
  3. 背のファスナ一気に割るやちちろ鳴く 村山砂田男【季語=ちちろ鳴く(秋)】
  4. 【結社推薦句】コンゲツノハイク【2021年3月分】
  5. 神保町に銀漢亭があったころ【第21回】五日市祐介
  6. 冴えかへるもののひとつに夜の鼻 加藤楸邨【季語=冴返る(春)】
  7. 「野崎海芋のたべる歳時記」タルト・オ・ポンム
  8. なく声の大いなるかな汗疹の児 高浜虚子【季語=汗疹(夏)】
  9. 【冬の季語】寒卵(寒玉子)
  10. 松山藩主松平定行公と東野、高浜虚子や今井つる女が訪れた茶屋について(2)
PAGE TOP