【冬の季語=三冬(11月〜1月)】蒲団(布団)
【ミニ解説】
「蒲団」の「蒲」は植物の「ガマ」。
かつてはガマの葉が「むしろ」という敷物の材料に使われていたため、この字が当てられているが、江戸期には、衣服など日常品への綿需要拡大を受けて、田に代わり綿の栽培や問屋・糸商といった綿産業が発達。次第に「布」という字が当てられることにもなったが、「蒲」という字のほうがインパクトがあるせいか、今もなお「蒲団」という字が選択されることも多い。
現代では、鳥の羽などをつめた軽くて暖かい「羽毛布団」も寝具として重宝される。
「蒲団干す」「干蒲団」「敷布団」「掛布団」などとしても使われる。「毛布」なども冬の季語。
「夏蒲団」「夏掛」は夏の季語である。
【蒲団(布団)(上五)】
この蒲団幾度君を泊めにけり 荻原井泉水
蒲団より落ちたる文庫本スリラー 藤田湘子
蒲団叩きたんぽぽ離ればなれなり 小川軽舟
【蒲団(布団)(中七)】
嵐雪とふとん引き合ふ侘寝かな 与謝蕪村
ある時は蒲団のおごり好もしき 高濱虚子
美しき布団に病みて死ぬ気なく 森田愛子
父の死や布團の下にはした銭 細谷源二
夢に夢見て蒲団の外に出す腕よ 桑原三郎
亡き母が蒲団を敷いてから帰る 八田木枯
いちまいの蒲団の裏の枯野かな 齋藤愼爾
奥の間に蒲団伸べある町家かな 角谷昌子
県道に俺のふとんが捨ててある 西原天気
押入を開けて布団の明るしよ 上田信治
怖い漫画朝の蒲団の中にあり 小久保佳世子
てのひらを蒲団に隠しおほせる日 中嶋憲武
掛け直す蒲団の乳のにほひかな 伊藤幹哲
【蒲団(布団)(下五)】
死神を蹶る力無き蒲団かな 高浜虚子
花びらのときに入りこむ蒲団部屋 桂信子
先生の眠つてをりし蒲団かな 今井杏太郎
聖人に夢なしと聞く厚蒲団 有馬朗人
旗を灯に変えるすべなし汗の蒲団 大本義幸
どうみても悪夢見さうな厚蒲団 伊藤伊那男
上海に背負ひて来たる蒲団かな 日原傳
名前からちょっとずらして布団敷く 倉本朝世