【夏の季語=三夏(5月〜7月)】蛇
蛇は、夏にもっとも活動的となる。「くちなわ」「ながむし」とも。「青大将」などの個別種が、夏の季語として使われることもある。
また、蛇が脱皮することをあらわす「蛇衣を脱ぐ」という言葉も、夏の季語。
なお、春の季語としては「蛇穴を出づ」、秋の季語としては「秋の蛇」「穴惑」「蛇穴に入る」、冬の季語として「冬眠」がある。
【蛇(上五)】
蛇臭き天よと思う齢かな 永田耕衣
蛇を知らぬ天才とゐて風の中 鈴木六林男
山の蛇棒の如くに飛ぶといふ 宇佐美魚目
蛇消えし辺りの水の匂ひけり 稲畑汀子
蛇打たな棒が昨日も今日もある 柿本多映
蛇は全長以外なにももたない 中内火星
【蛇(中七)】
夕釣や蛇のひきゆく水脈あかり 芝不器男
全長のさだまりて蛇すすむなり 山口誓子
草の根の蛇の眠りにとどきけり 桂信子
双頭の蛇の如くに生き悩み 野見山朱鳥
全身で蛇死にゆくや尼寺冷え 和田悟朗
万歳は縞蛇またぎ行方も知れず 安井浩司
めきめきと蛇が鳥呑むはやさかな 江里昭彦
憧れの蛇に覚えてもらいけり 杉浦圭祐
【蛇(下五)】
水ゆれて鳳凰堂へ蛇の首 阿波野青畝