籐椅子飴色何々婚に関係なし
鈴木榮子
(「春燈」『角川俳句大歳時記』)
〈何々婚〉といった場合、〈何々〉には、どんな言葉を思い浮かべれば良いのだろうか。〈婚〉にもいろいろある。新婚から始まり十年目ごとに錫婚、磁器婚、真珠婚、ルビー婚、金婚と続く。ちなみに銀婚は、25年目である。結婚の年月以外にも、恋愛婚、お見合い婚、政略婚、できちゃった婚、略奪婚、週末婚、別居婚、契約婚、重婚、同性婚などがある。多様化が進んでいる現代でも、人々は結婚形態に固定的な概念を押し付けるものだ。世間一般の結婚形態から少しでも外れれば、ざわざわと噂し、非難する。確かに法律に乗っ取っていない結婚形態には様々な差しさわりがあるのだが、法律に乗っ取っていても固定的な概念と異なればざわざわとするのだ。
内館牧子脚本のドラマ『週末婚』が放送されたのは、平成11年の新世紀突入直前であった。普段は自由に暮らし、週末だけ一緒に暮らす新しい結婚を描いた。当時のキャリアウーマンを目指す女性にとっては、仕事も恋人も手にすることのできる結婚形態の提案でもあった。作者は小説のあとがきで、今後週末婚が増えるであろうと予測していたが、現実には週末婚という結婚形態は流行らなかった。
それから五年後には、石川達三の小説『僕たちの失敗』をもとにした昼ドラ『契約結婚』が放送され、話題を呼んだ。三年間の期間限定、更新有りの契約という形態で婚姻生活をする男女の波乱を描いた。当時は、契約社員という新しい雇用形態が企業を支えはじめていたこともあり、合理的ではないかとの見方もあった。
日本には、かつて通い婚の風習があり、男女の婚姻に関しては比較的自由な国であった。上流社会では政略結婚が通例であったが、それはどこの国でも同じことである。近代においては、法律に乗っ取った結婚でかつ恋愛結婚を理想としている。
〈何々婚〉の〈何々〉には、未婚、離婚、再婚、復縁婚、なども入るであろう。法律に乗っ取った恋愛婚はあくまでも理想であり、当たり前の結婚をすることはとても難しい。そして、当たり前の結婚を持続することはさらに難しい。人々の語る〈何々婚〉に無関心でいられれば良いのだが、そんな風に自由に生きれない生きづらい世の中なのだ。
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