笠原小百合の「競馬的名句アルバム」【第19回】2022年ヴィクトリアマイル ソダシ

【第19回】
白毛馬といふといへども
(2022年ヴィクトリアマイル ソダシ)

「どうやって馬を見分けているのですか?」

競馬場で吟行する際、そう尋ねられることがある。

パドックなど一頭一頭ゼッケンでその名を確認できる場合は問題ないが、レースで走っている馬を見分けるのは、初めて競馬を見る人にとってはなかなか難しいことなのかもしれない。

レース中の競走馬を見分けるには、騎手の帽子の色、ゼッケンの数字に注目するのが良い。そのうち騎手の勝負服の柄や馬のメンコの色、馬体の大きさ、馬の顔の模様、騎手の騎乗フォームなどでも見分けがつくようになるが、そこまで到達するにはそれなりの月日が必要だ。

自分の応援している馬がどこを走っているのかわからないままレースが終わってしまった、とならないためにも、初めのうちは「目立つ馬を応援する」と決めてしまうのも競馬を楽しむ一つのコツかもしれない。

そこでおすすめしたいのが白毛馬だ。

「白馬に乗った王子様」と言われて想像するような毛色の真っ白な馬のことで、レース中でもとにかくよく目立つ。

競走馬は茶や黒といった色の馬が多いので、見失うことはほぼないだろう。

オグリキャップやゴールドシップなどの芦毛は成長と共に灰色から白へとその毛色が変化するが、白毛馬は生まれたときから真っ白であることが多い。

ただ非常に珍しい種類の毛色なので、そうそうレースに出走することがない。出会える確率は残念ながら低いのだが、数年前、そんな珍しい白毛馬がG1レースでも活躍していた。

その馬の名は、ソダシ。

ソダシはうっとりするほど美しい白い馬体で、牝馬クラシック初戦である桜花賞をはじめG1を3勝した、人気も実力も備えた名馬である。

ソダシについてはハイクノミカタの連載にて細村星一郎氏も言及されているのでそちらをぜひご覧いただきたい。

白毛馬初の桜花賞馬となったソダシは、次走の優駿牝馬で1番人気に支持されながらも8着に敗れる。札幌記念(G2)は勝利したものの、秋華賞、チャンピオンズステークスと二桁着順が続いた。距離延長、ダート転向などソダシの適性への陣営の模索を経て、自身が3戦3勝している芝1600メートルという舞台に戻ってきた。それが2022年のヴィクトリアマイルである。

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