白馬の白き睫毛や霧深し
小澤青柚子
「白馬」と聞いて我々競馬ファンが思い出すのは、やはり桜花賞を制したソダシだろう。G1三勝だけでなく、ダートへの挑戦や騎手の乗り換えももあったが、方々で名馬と呼んで差し支えない結果を残した。
ソダシはそのルックスゆえ、多くの新規ファンを獲得した。加熱する人気の一方で、「ミーハーな馬」のレッテルを貼る人々がいたのも事実である。そうした多方面からの期待と冷評を一身に受けながらも成果を挙げたソダシの苦労は計り知れない。
掲句は小澤青柚子(せいゆうし)の満州での作品。渡辺白泉や阿部青鞋、三橋敏雄とともに古俳諧の研究などを通して俳句の行き先をひたむきに探った青柚子は、俳誌『風』の表紙や編集も務めた。
なお、掲句は昭和二十年三月十一日に戦地病院で亡くなった青柚子の辞世句であるという。
彼が昭和三十年代の俳壇を生きていたら…と、夢想せずにはいられない。
(細村星一郎)
【執筆者プロフィール】
細村星一郎(ほそむら・せいいちろう)
2000年生。第16回鬼貫青春俳句大賞。Webサイト「巨大」管理人。
【細村星一郎のバックナンバー】
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