【夏の季語】葛切

【夏の季語=三夏(5ー7月)】葛切

葛粉を水で溶かし、型に入れてから加熱し板状に固めたものをうどんのように細長く切った麺状の食べ物。鍋料理にも用いられるが、季語としては、夏の食べ物である。冷して蜜をかけて食べたりする。江戸時代には既に庶民の間で親しまれた。

葛切はかつて「水繊(煎)/水仙」(すいせん)と呼ばれていたが、これはもともと黄色と白の二色を交えて作られていたことによる。今でも葛粽を「水仙粽」と呼んだりするのは、そのためである。

葛は、マメ科のツル植物で、日当たりのよい山野に育ち、初秋に赤紫色の花をつける(「葛の花」は秋の季語であり、かつては万葉集に葛を詠んだ歌がたくさん収録されている)。

秋も終わりに近づくと、根っこには葛デンプンがたっぷりと蓄えられる。この根を粉砕して食用の粉としたものが、くず粉であるが、食用デンプンにするためには長期間の精製が必要。戦乱のない江戸時代という社会的環境があったからこそ普及した食べ物かもしれない。


【葛切(上五)】
葛切や南さみしき京の空 藤田湘子
葛切やすこし剩りし旅の刻 草間時彦
葛切りや神田生まれの嫁が来て 平岡公子
葛切を食べて賢くなりしかな 今井杏太郎
葛切や弾む師の声聞きながら 小圷健水
葛切のこほりの影をすくひけり 原田桂子

【葛切(中七)】
夕風の遊び葛切かがやかす 斎藤秀雄

【葛切(下五)】



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