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ここまで「こいつ玉子酒アンチだ!」と思われても仕方ないような書き方をしてしまいました。しかしながら玉子酒が歳時記に載っている不思議な飲み物だけの認識になってしまうのは勿体ないと思いませんか?そこで私は甘辛両党が楽しめるニュー玉子酒を提案します。
まず甘党におすすめしたい玉子酒。マグカップ一杯の牛乳と卵1個、大さじ1ほどの砂糖をよく混ぜ小鍋に入れ火にかける。焦げないようにゆっくりかき混ぜとろみがついたらラム酒やブランデーなど洋酒をひと匙。お子様向けにはここで再び火にかけアルコールを飛ばしてください。仕上げに好みでシナモンを振れば大人の香りに。要はエッグノッグにお酒を加えたもの。甘さをメープルシロップや蜂蜜などに変えるアレンジもぜひ!

そして甘いものが苦手な呑兵衛の方には出汁割り玉子酒はいかがでしょうか。出汁割りとは日本酒や焼酎とおでんの出汁を1:3割った東京 赤羽のおでん屋さん発祥の飲み方。こちらはしっかりアルコールが残っているのでご注意くださいね。
旨味の強さが特徴的な純米酒におでんの出汁または普通の出汁(白だしや顆粒出汁でも可)を1:3で合わせたものに卵を1個溶きほぐし、アルコールが飛ばぬよう50度前後まで加熱。仕上げに好みで七味をひと振り。おでん出汁が基本ですが、鰹節や昆布など出汁も奥が深いもの。ぜひ色々な出汁でお試しください。二つともざっくりとした分量なので、ぜひお好みの量でアレンジしてみてくださいね。

ニュー玉子酒は歳時記の玉子酒の本意からずれているかもしれません。しかし鮒鮨をはじめとする熟鮓(なれずし:夏の季語)から始まった寿司も今はハンバーグ寿司やカリフォルニア巻きなど様々なネタが定着し国内外にて親しまれています。「あれは本当の鮨ではない」という方もいますが、時代に応じて形を変えたからこそ発展した食文化。原型となった熟鮓も滋賀を中心に残り、根強いファンがいるのも事実です。ならば玉子酒も本来のレシピを知った上で口に馴染むよう形を変えて楽しむのもひとつの季語の味わい方ではないでしょうか。
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そして自己紹介が遅くなりました。佐野瑞季と申します。普段は「雲の峰」に所属し主に京都で活動しています。そして2024年4月より季語となる食材を料理し、味わいながら句座を囲む超結社句会「四季の料理帖」を開催している食いしんぼうです。今回から全9回、木曜日の枠をお借りし主に食の句、美味しそうな句を鑑賞していきたいと思います。2ヶ月間どうぞよろしくお願いいたします!
(佐野瑞季)
【執筆者プロフィール】
佐野瑞季(さの・みずき)
1997年静岡県生まれ
「雲の峰」所属 超結社句会「四季の料理帖」代表
第17回鬼貫青春俳句大賞
夢はかまくらの中でお餅を焼くこと
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