夜の子の明日の水着を着てあるく
森賀まり
2018年9月9日、山口昭男『木簡』の第69回(2017年度)読売文学賞受賞を祝う会が神戸で開かれた。当時、俳句をはじめて2年ほどの自分にとって、名前は聞いたことがあるが顔はわからない著名な俳人たちが多く集われた会であった。
森賀まりさんもその中のおひとり。不躾に「田中裕明のファンです。」と話しかけた私に、笑顔で応えてくださった。森賀さんの俳句のことは何も告げずに突撃したことが、今思えば恥ずかしい。
掲句は第二句集『瞬く』の中の一句。子供と関わりのある人なら、ぱっと景は浮かぶであろう。しかし、韻文で表現することは容易ではない。この句の眼目は下五の「あるく」。様々な解釈ができるが、私は子供がひとしきり水着姿を披露したあと、まだ水着を脱がずに部屋をうろうろしている様子を思い描く。大人からの「そろそろ水着を脱いで、早く寝なさい。」という声までも聞こえてきそうである。子供の本質が「あるく」に詰まっており、そこがたまらなく愛おしい。
「秋草」10周年記念句会で森賀さんにお会いできる予定であったが、コロナ禍により開催が見送られ叶わなかった。またいつの日かお会いできるときは、もう少し気の利いた話しかけ方をしたいと思っている。
(常原 拓)
【執筆者プロフィール】
常原 拓(つねはら・たく)
1979年 神戸市生まれ
2016年 「秋草」入会 山口昭男に師事
2023年 第7回俳人協会新鋭俳句賞準賞
2024年 第一句集『王国の名』第7回俳人協会新鋭俳句賞準賞受賞の「秋草」所属の中堅俳人。
待望の第一句集。常原拓句集『王国の名』
四六判変型上製
200ページ
2000円(税別)ISBNコード
978-4861985805
2020年10月からスタートした「ハイクノミカタ」。【シーズン1】は、月曜=日下野由季→篠崎央子(2021年7月〜)、火曜=鈴木牛後、水曜=月野ぽぽな、木曜=橋本直、金曜=阪西敦子、土曜=太田うさぎ、日曜=小津夜景さんという布陣で毎日、お届けしてきた記録がこちらです↓
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