【祝1周年】ハイクノミカタ season1 【2020.10-2021.9】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

2020年10月からスタートした「ハイクノミカタ」。
【シーズン1】は、各曜日を7名の気鋭の俳人が担当、季節の1句をご紹介。月曜=日下野由季→篠崎央子(2021年7月〜)、火曜=鈴木牛後、水曜=月野ぽぽな、木曜=橋本直、金曜=阪西敦子、土曜=太田うさぎ、日曜=小津夜景さんという布陣で毎日、お届けしてきた記録がこちらです。


【2020年10月のハイクノミカタ】

〔10月1日(木)〕色里や十歩離れて秋の風       正岡子規
10月2日(金)〕やゝ寒し閏遅れの今日の月      松藤夏山
10月3日(土)〕長き夜の四人が実にいい手つき    佐山哲郎
10月4日(日)〕迷宮へ靴取りにゆくえれめのぴー   中嶋憲武
10月5日(月)〕渡り鳥はるかなるとき光りけり    川口重美
10月6日(火)〕立ち枯れてあれはひまはりの魂魄   照屋眞理子
10月7日(水)〕つゆくさをちりばめここにねむりなさい 冬野虹
10月8日(木)〕秋鰺の青流すほど水をかけ     長谷川秋子
10月9日(金)〕クッキーと林檎が好きでデザイナー  千原草之
10月10日(土)〕秋蝶の転校生のやうに来し      大牧 広
10月11日(日)〕ポメラニアンすごい不倫の話きく   長嶋 有
10月12日(月)〕流星も入れてドロップ缶に蓋      今井 聖
10月13日(火)〕糸電話古人の秋につながりぬ     攝津幸彦
10月14日(水)〕一番に押す停車釦天の川     こしのゆみこ
10月15日(木)〕大いなる梵字のもつれ穴まどひ     竹中宏
10月16日(金)〕行秋や音たてて雨見えて雨      成瀬正俊
10月17日(土)〕ワイシャツに付けり蝗の分泌液    茨木和生
10月18日(日)〕渚にて金澤のこと菊のこと      田中裕明
10月19日(月)〕好きな繪の賣れずにあれば草紅葉   田中裕明
10月20日(火)〕胸元に来し雪虫に胸与ふ      坂本タカ女
10月21日(水)〕おなじ長さの過去と未来よ星月夜  中村加津彦
10月22日(木)〕ひっくゝりつっ立てば早案山子かな  高田蝶衣
10月23日(金)〕火達磨となれる秋刀魚を裏返す    柴原保佳
10月24日(土)〕女房の化粧の音に秋澄めり      戸松九里
10月25日(日)〕たが魂ぞほたるともならで秋の風   横井也有
10月26日(月)〕団栗の二つであふれ吾子の手は    今瀬剛一
10月27日(火)〕啄木鳥や落葉をいそぐ牧の木々   水原秋桜子
10月28日(水)〕真っ白な番つがいの蝶よ秋草に    木村丹乙
10月29日(木)〕をぎはらにあした花咲きみな殺し   塚本邦雄
10月30日(金)〕手を敷いて我も腰掛く十三夜     中村若沙
10月31日(土)〕新蕎麦や狐狗狸さんを招きては    藤原月彦


【2020年11月のハイクノミカタ】

〔11月1日(日)〕風へおんがくがことばがそして葬    夏木久
〔11月2日(月)〕夕づつにまつ毛澄みゆく冬よ来よ  千代田葛彦
〔11月3日(火)〕真っ黒な鳥が物言う文化の日     出口善子
〔11月4日(水)〕木の中に入れば木の陰秋惜しむ     大西朋
〔11月5日(木)〕紅葉の色きはまりて風を絶つ     中川宋淵
〔11月6日(金)〕澁柿を食べさせられし口許に     山内山彦
〔11月7日(土)〕革靴の光の揃ふ今朝の冬      津川絵里子
〔11月8日(日)〕COVID-19十一月の黒いくれよん   瀬戸正洋
〔11月9日(月)〕冬と云ふ口笛を吹くやうにフユ    川崎展宏
〔11月10日(火)〕人の世に雪降る音の加はりし     伊藤玉枝
〔11月11日(水)〕とび・からす息合わせ鳴く小六月   城取信平
〔11月12日(木)〕さて、どちらへ行かう風がふく     山頭火
〔11月13日(金)〕いつまでも狐の檻に襟を立て     小泉洋一
〔11月14日(土)〕どんぶりに顔を埋めて暮早し     飯田冬眞
〔11月15日(日)〕後鳥羽院鳥羽院萩で擲りあふ     佐藤りえ
〔11月16日(月)〕逢へば短日人しれず得ししづけさも  野澤節子
〔11月17日(火)〕馬小屋に馬の表札神無月       宮本郁江
〔11月18日(水)〕鴨翔つてみづの輪ふたつ交はりぬ  三島ゆかり
〔11月19日(木)〕山茶花の弁流れ来る坂路かな     横光利一
〔11月20日(金)〕浅草をはづれはづれず酉の市   松岡ひでたか
〔11月21日(土)〕冬の鷺一歩の水輪つくりけり     好井由江
〔11月22日(日)〕アカコアオコクロコ共通海鼠語圏   佐山哲郎
〔11月23日(月)〕いつの間に昼の月出て冬の空     内藤鳴雪
〔11月24日(火)〕馬孕む冬からまつの息赤く      粥川青猿
〔11月25日(水)〕火種棒まつ赤に焼けて感謝祭     陽美保子
〔11月26日(木)〕水鳥の夕日に染まるとき鳴けり    林原耒井
〔11月27日(金)〕コーヒーに誘ふ人あり銀杏散る    岩垣子鹿
〔11月28日(土)〕暖房や絵本の熊は家に住み       川島葵 
〔11月29日(日)〕凩の会場へ行く燕尾服        中田美子
〔11月30日(月)〕あたたかき十一月もすみにけり   中村草田男


【2020年12月のハイクノミカタ】

〔12月1日(火)〕印刷工枯野に風を増刷す        能城檀 
〔12月2日(水)〕冬銀河旅鞄より流れ出す       坂本宮尾 
〔12月3日(木)〕はやり風邪下着上着と骨で立つ    村井和一
〔12月4日(金)〕ストーブに判をもらひに来て待てる 粟津松彩子
〔12月5日(土)〕略図よく書けて忘年会だより    能村登四郎
〔12月6日(日)〕しろい小さいお面いっぱい一茶のくに 阿部完市
〔12月7日(月)〕大空に伸び傾ける冬木かな      高浜虚子
〔12月8日(火)〕ストーブに貌が崩れていくやうな  岩淵喜代子
〔12月9日(水)〕雪掻きをしつつハヌカを寿ぎぬ    朗善千津
〔12月10日(木)〕波冴ゆる流木立たん立たんとす    山口草堂
〔12月11日(金)〕おでん屋の酒のよしあし言ひたもな  山口誓子
〔12月12日(土)〕蓮ほどの枯れぶりなくて男われ   能村登四郎
〔12月13日(日)〕またわたし、またわたしだ、と雀たち 柳本々々
〔12月14日(月)〕てつぺんにまたすくひ足す落葉焚   藺草慶子
〔12月15日(火)〕白息の駿馬かくれもなき曠野     飯田龍太
〔12月16日(水)〕南天のはやくもつけし実のあまた   中川宋淵
〔12月17日(木)〕杖上げて枯野の雲を縦に裂く     西東三鬼
〔12月18日(金)〕蔓の先出てゐてまろし雪むぐら    野村泊月
〔12月19日(土)〕着ぶくれて田へ行くだけの橋見ゆる  吉田穂津
〔12月20日(日)〕t t t ふいにさざめく子らや秋     鴇田智哉
〔12月21日(月)〕うつくしき羽子板市や買はで過ぐ   高浜虚子
〔12月22日(火)〕懐手蹼ありといつてみよ       石原吉郎
〔12月23日(水)〕手袋を出て母の手となりにけり     仲寒蟬
〔12月24日(木)〕柊を幸多かれと飾りけり       夏目漱石
〔12月25日(金)〕この出遭ひこそクリスマスプレゼント 稲畑汀子
〔12月26日(土)〕霜柱ひとはぎくしやくしたるもの  山田真砂年
〔12月27日(日)〕幾千代も散るは美し明日は三越    攝津幸彦
〔12月28日(月)〕数へ日を二人で数へ始めけり     矢野玲奈
〔12月29日(火)〕牛乳の膜すくふ節季の金返らず   小野田兼子
〔12月30日(水)〕極月の空青々と追ふものなし     金田咲子
〔12月31日(木)〕大年の夜に入る多摩の流れかな    飯田龍太


【2021年1月のハイクノミカタ】

〔1月1日(金)〕去年今年貫く棒の如きもの      高浜虚子
〔1月2日(土)〕初春の船に届ける祝酒        中西夕紀
〔1月4日(月)〕いづくともなき合掌や初御空     中村汀女
〔1月5日(火)〕牛日や駅弁を買いディスク買い   木村美智子
〔1月6日(水)〕米国のへそのあたりの去年今年    内村恭子
〔1月7日(木)〕土器に浸みゆく神酒や初詣      高浜年尾
〔1月8日(金)〕酒醸す色とは白や米その他     中井余花朗
〔1月9日(土)〕悲しみもありて松過ぎゆくままに   星野立子
〔1月10日(日)〕コーヒー沸く香りの朝はハットハウスの青さで 古屋翠渓
〔1月11日(月)〕松過ぎの一日二日水の如       川崎展宏 
〔1月12日(火)〕極寒の寝るほかなくて寝鎮まる    西東三鬼
〔1月13日(水)〕マフラーの長きが散らす宇宙塵   佐怒賀正美
〔1月14日(木)〕初場所や昔しこ名に寒玉子     百合山羽公
〔1月15日(金)〕ラグビーのジヤケツの色の敵味方   福井圭児
〔1月16日(土)〕宝くじ熊が二階に来る確率      岡野泰輔
〔1月17日(日)〕開墾のはじめは豚とひとつ鍋     依田勉三
〔1月18日(月)〕此木戸や錠のさされて冬の月       其角
〔1月19日(火)〕しばれるとぼつそりニッカウィスキー 依田明倫
〔1月20日(水)〕天狼やアインシュタインの世紀果つ  有馬朗人
〔1月21日(木)〕死なさじと肩つかまるゝ氷の下    寺田京子
〔1月22日(金)〕酒庫口のはき替え草履寒造      西山泊雲
〔1月23日(土)〕枯野から信長の弾くピアノかな    手嶋崖元
〔1月25日(月)〕水仙や古鏡の如く花をかかぐ    松本たかし
〔1月26日(火)〕ピザーラの届かぬ地域だけ吹雪く    かくた
〔1月27日(水)〕底冷えを閉じ込めてある飴細工    仲田陽子
〔1月28日(木)〕同じ事を二本のレール思はざる    阿部青鞋 
〔1月29日(金)〕藷たべてゐる子に何が好きかと問ふ  京極杞陽
〔1月30日(土)〕温室の空がきれいに区切らるる    飯田 晴
〔1月31日(日)〕さざなみのかがやけるとき鳥の恋   北川美美


【2021年2月のハイクノミカタ】

〔2月1日(月)〕叱られて目をつぶる猫春隣    久保田万太郎
〔2月2日(火)〕節分の鬼に金棒てふ菓子も     後藤比奈夫
〔2月3日(水)〕胴ぶるひして立春の犬となる     鈴木石夫 
〔2月4日(木)〕オリヲンの真下春立つ雪の宿     前田普羅
〔2月5日(金)〕梅ほつほつ人ごゑ遠きところより  深川正一郎
〔2月6日(土)〕パンクスに両親のゐる春炬燵    五十嵐筝曲
〔2月7日(日)〕あかさたなはまやらわをん梅ひらく  西原天気
〔2月8日(月)〕紅梅や凍えたる手のおきどころ    竹久夢二
〔2月9日(火)〕流氷は嘶きをもて迎ふべし      青山茂根
〔2月10日(水)〕人垣に春節の龍起ち上がる      小路紫峡 
〔2月11日(木)〕ふゆの春卵をのぞくひかりかな    夏目成美
〔2月12日(金)〕来よ来よと梅の月ヶ瀬より電話   田畑美穂女
〔2月13日(土)〕二ン月や鼻より口に音抜けて     桑原三郎
〔2月14日(日)〕菜の花や月は東に日は西に      与謝蕪村
〔2月15日(月)〕氷に上る魚木に登る童かな      鷹羽狩行
〔2月16日(火)〕昨日より今日明るしと雪を掻く    木村敏男
〔2月17日(水)〕梅咲いて庭中に青鮫が来ている    金子兜太
〔2月18日(木)〕餅花のさきの折鶴ふと廻る       篠原梵
〔2月19日(金)〕梅の径用ありげなる人も行く    今井つる女
〔2月20日(土)〕あしかびの沖に御堂の潤み立つ   しなだしん
〔2月21日(日)〕絵葉書の消印は流氷の町       大串 章
〔2月22日(月)〕来て見ればほゝけちらして猫柳    細見綾子
〔2月23日(火)〕昼酒に喉焼く天皇誕生日       石川桂郎
〔2月24日(水)〕冴えかへるもののひとつに夜の鼻   加藤楸邨
〔2月25日(木)〕幻影の春泥に投げ出されし靴     星野立子
〔2月26日(金)〕九頭龍へ窓開け雛の塵払ふ      森田愛子
〔2月27日(土)〕花ミモザ帽子を買ふと言ひ出しぬ  星野麥丘人
〔2月28日(日)〕春雷や刻来り去り遠ざかり      星野立子


【2021年3月のハイクノミカタ】

〔3月1日(月)〕軋みつつ花束となるチューリップ  津川絵理子
〔3月2日(火)〕引越の最後に子猫仕舞ひけり      未来羽
〔3月3日(水)〕雛飾りつゝふと命惜しきかな     星野立子
〔3月4日(木)〕隠岐やいま木の芽をかこむ怒濤かな  加藤楸邨
〔3月5日(金)〕雛納めせし日人形持ち歩く      千原草之
〔3月6日(土)〕復興の遅れの更地春疾風       菊田島椿
〔3月7日(日)〕行く春や鳥啼き魚の目は泪        芭蕉
〔3月8日(月)〕妻の遺品ならざるはなし春星も    右城暮石
〔3月9日(火)〕取り除く土の山なす朧かな     駒木根淳子
〔3月10日(水)〕すうっと蝶ふうっと吐いて解く黙禱   中村晋
〔3月11日(木)〕白梅や天没地没虚空没        永田耕衣
〔3月12日(金)〕三月の又うつくしきカレンダー    下田実花
〔3月13日(土)〕飯蛸に昼の花火がぽんぽんと     大野朱香
〔3月14日(日)〕止まり木に鳥の一日ヒヤシンス   津川絵理子
〔3月15日(月)〕人はみななにかにはげみ初桜    深見けん二
〔3月16日(火)〕つちふるや自動音声あかるくて  神楽坂リンダ
〔3月17日(水)〕クローバーや後髪割る風となり     不破博
〔3月18日(木)〕海松かゝるつなみのあとの木立かな  正岡子規
〔3月19日(金)〕見るうちに開き加はり初桜     深見けん二
〔3月20日(土)〕漕いで漕いで郵便配達夫は蝶に    関根誠子
〔3月21日(日)〕蝌蚪の紐掬ひて掛けむ汝が首に     林雅樹
〔3月22日(月)〕父がまづ走つてみたり風車       矢島渚男
〔3月23日(火)〕鉄橋を決意としたる雪解川      松山足羽
〔3月24日(水)〕卒業の歌コピー機を掠めたる    宮本佳世乃
〔3月25日(木)〕花の影寝まじ未来が恐しき      小林一茶
〔3月26日(金)〕日の遊び風の遊べる花の中     後藤比奈夫
〔3月27日(土)〕春は曙そろそろ帰つてくれないか   櫂未知子
〔3月28日(日)〕タワーマンションのロック四重や鳥雲に 鶴見澄子
〔3月29日(月)〕さへづりのだんだん吾を容れにけり  石田郷子
〔3月30日(火)〕雪解川暮らしの裏を流れけり     太田土男
〔3月31日(水)〕にはとりのかたちに春の日のひかり  西原天気


【2020年4月のハイクノミカタ】

〔4月1日(木)〕鳥の巣に鳥が入つてゆくところ   波多野爽波
〔4月2日(金)〕芽柳の傘擦る音の一寸の間      藤松遊子
〔4月3日(土)〕春林をわれ落涙のごとく出る     阿部青鞋
〔4月4日(日)〕退帆のディンギー跳ねぬ春の虹    根岸哲也
〔4月5日(月)〕桜蘂ふる一生が見えてきて        岡本眸
〔4月6日(火)〕彫り了へし墓抱き起す猫柳     久保田哲子
〔4月7日(水)〕春泥を帰りて猫の深眠り        藤嶋務
〔4月8日(木)〕おにはにはにはにはとりがゐるはるは  大畑等
〔4月9日(金)〕ネックレスかすかに金や花を仰ぐ  今井千鶴子
〔4月10日(土)〕鶯や製茶会社のホツチキス      渡邊白泉
〔4月11日(日)〕その朝も虹とハモンド・オルガンで   正岡豊
〔4月12日(月)〕筍の光放つてむかれけり       渡辺水巴
〔4月13日(火)〕木の根明く仔牛らに灯のひとつづつ  陽美保子
〔4月14日(水)〕さまざまの事おもひ出す桜かな    松尾芭蕉
〔4月15日(木)〕非常口に緑の男いつも逃げ     田川飛旅子
〔4月16日(金)〕世にまじり立たなんとして朝寝かな 松本たかし
〔4月17日(土)〕竹秋や男と女畳拭く         飯島晴子
〔4月18日(日)〕紀元前二〇二年の虞美人草      水津達大
〔4月20日(火)〕他人とは自分のひとり残る雪     杉浦圭祐
〔4月21日(水)〕水の地球すこしはなれて春の月   正木ゆう子
〔4月22日(木)〕産みたての卵や一つ大新緑      橋本夢道
〔4月23日(金)〕燈台に銘あり読みて春惜しむ     伊藤柏翠
〔4月24日(土)〕江の島の賑やかな日の仔猫かな   遠藤由樹子
〔4月25日(日)〕鳥を見るただそれだけの超曜日    川合大祐
〔4月26日(月)〕鳥帰るいづこの空もさびしからむに   安住敦
〔4月27日(火)〕帰農記にうかと木の芽の黄を忘ず   細谷源二
〔4月28日(水)〕追ふ蝶と追はれる蝶と入れ替はる   岡田由季
〔4月29日(木)〕生前の長湯の母を待つ暮春      三橋敏雄
〔4月30日(金)〕大いなる春を惜しみつ家に在り    星野立子


【2021年5月のハイクノミカタ】

〔5月1日(土)〕若葉してうるさいッ玄米パン屋さん  三橋鷹女
〔5月3日(月)〕母の日の義母にかなしきことを告ぐ   林誠司
〔5月4日(火)〕一臓器とも耕人の皺の首       谷口智行
〔5月5日(水)〕武具飾る海をへだてて離れ住み    加藤耕子
〔5月6日(木)〕尺蠖の己れの宙を疑はず       飯島晴子
〔5月7日(金)〕除草機を押して出会うてまた別れ   越野孤舟
〔5月8日(土)〕黄金週間屋上に鳥居ひとつ     松本てふこ
〔5月9日(日)〕夕焼けに入っておいであたまから    妹尾凛
〔5月11日(火)〕空のいろ水のいろ蝦夷延胡索     斎藤信義
〔5月12日(水)〕ゆく船に乗る金魚鉢その金魚     島田牙城
〔5月13日(木)〕雲の上に綾蝶舞い雷鳴す      石牟礼道子
〔5月14日(金)〕酒よろしさやゑんどうの味も好し   上村占魚
〔5月15日(土)〕吸呑の中の新茶の色なりし       梅田津
〔5月16日(日)〕足指に押さへ編む籠夏炉の辺     余村光世
〔5月17日(月)〕水鏡してあぢさゐのけふの色    上田五千石
〔5月18日(火)〕日が照つて厩出し前の草のいろ   鷲谷七菜子
〔5月19日(水)〕わが影を泉へおとし掬ひけり     木本隆行
〔5月20日(木)〕夕立や野に二筋の水柱       広江八重桜
〔5月21日(金)〕麦秋や光なき海平らけく        上村占魚
〔5月22日(土)〕多国籍香水六時六本木        佐川盟子
〔5月23日(日)〕老人がフランス映画に消えてゆく     石部明
〔5月24日(月)〕水鏡してあぢさゐのけふの色    上田五千石
〔5月25日(火)〕郭公や何処までゆかば人に逢はむ   臼田亜浪
〔5月26日(水)〕指入れてそろりと海の霧を巻く    野崎憲子
〔5月27日(木)〕谺して山ほととぎすほしいまゝ    杉田久女
〔5月28日(金)〕麦打の埃の中の花葵        本田あふひ
〔5月29日(土)〕好きな樹の下を通ひて五月果つ    岡崎るり子
〔5月30日(日)〕夏潮のコバルト裂きて快速艇     牛田修嗣
〔5月31日(月)〕はなびらの垂れて静かや花菖蒲    高浜虚子


【2021年6月のハイクノミカタ】

〔6月1日(火)〕干されたるシーツ帆となる五月晴    金子敦
〔6月2日(水)〕旅鞄遠くより風来て夏の海となる   飯田龍太
〔6月3日(木)〕棕梠の葉に高き雨垂れ青峰忌    秋元不死男
〔6月4日(金)〕あとからの蝶美しや花葵       岩木躑躅
〔6月5日(土)〕蚊を食つてうれしき鰭を使ひけり    日原傳
〔6月8日(火)〕でで虫の繰り出す肉に遅れをとる   飯島晴子
〔6月9日(水)〕吊皮のしづかな拳梅雨に入る     村上鞆彦
〔6月10日(木)〕水底を涼しき風のわたるなり     会津八一
〔6月11日(金)〕麺麭摂るや夏めく卓の花蔬菜     飯田蛇笏
〔6月12日(土)〕じゆてーむと呟いてゐる鯰かな    仙田洋子
〔6月13日(日)〕1 名前:名無しさん@手と足をもいだ丸太にして返し  湊圭伍
〔6月15日(火)〕夫いつか踊子草に跪く       都築まとむ
〔6月16日(水)〕こすれあく蓋もガラスの梅雨曇    上田信治
〔6月17日(木)〕草田男やよもだ志向もところてん    村上護
〔6月18日(金)〕父の日の父に甘えに来たらしき   後藤比奈夫
〔6月19日(土)〕父の日やある決意してタイ結ぶ    清水凡亭
〔6月20日(日)〕蟭螟の羽ばたきに空うごきけり    岡田一実
〔6月22日(火)〕青嵐神木もまた育ちゆく      遠藤由樹子
〔6月23日(水)〕ぼんやりと夏至を過せり脹脛     佐藤鬼房
〔6月24日(木)〕太宰忌や誰が喀啖の青みどろ    堀井春一郎
〔6月25日(金)〕夾竹桃くらくなるまで語りけり   赤星水竹居
〔6月26日(土)〕せんそうのもうもどれない蟬の穴   豊里友行
〔6月27日(日)〕木琴のきこゆる風も罌粟畠       岩田潔
〔6月29日(火)〕刈草高く積み軍艦が見えなくなる  鴻巣又四郎
〔6月30日(水)〕大空に自由謳歌す大花火       浅井聖子


【2021年7月のハイクノミカタ】

〔7月1日(木)〕海女ひとり潜づく山浦雲の峰     井本農一
〔7月2日(金)〕夕焼や答へぬベルを押して立つ   久保ゐの吉
〔7月3日(土)〕香水や時折キッとなる婦人      京極杞陽
〔7月4日(日)〕かけろふやくだけて物を思ふ猫      論派
〔7月5日(月)〕ダリヤ活け婚家の家風侵しゆく   鍵和田秞子
〔7月6日(火)〕乾草は愚かに揺るる恋か狐か     中村苑子
〔7月7日(水)〕みすずかる信濃は大き蛍籠     伊藤伊那男
〔7月8日(木)〕のこるたなごころ白桃一つ置く   小川双々子
〔7月9日(金)〕フラミンゴ同士暑がつてはをらず  後藤比奈夫
〔7月10日(土)〕ひそひそと四万六千日の猫      菊田一平
〔7月11日(日)〕ひまわりと俺たちなんだか美男子なり  谷佳紀
〔7月12日(月)〕凌霄は妻恋ふ真昼のシャンデリヤ  中村草田男
〔7月13日(火)〕農薬の粉溶け残る大西日       井上さち
〔7月14日(水)〕水を飲む風鈴ふたつみつつ鳴る    今井肖子
〔7月15日(木)〕遊女屋のあな高座敷星まつり     中村汀女
〔7月16日(金)〕ール買ふ紙幣さつをにぎりて人かぞへ  京極杞陽
〔7月17日(土)〕何故逃げる儂の箸より冷奴     豊田すずめ
〔7月18日(日)〕海底に足跡のあるいい天気   『誹風柳多留』
〔7月19日(月)〕梅漬けてあかき妻の手夜は愛す   能村登四郎
〔7月20日(火)〕麦真青電柱脚を失へる       土岐錬太郎
〔7月21日(水)〕麻服の鎖骨つめたし摩天楼      岩永佐保
〔7月22日(木)〕美しき緑走れり夏料理        星野立子
〔7月23日(金)〕炎天を山梨にいま来てをりて     千原草之
〔7月24日(土)〕暑き夜の惡魔が頤をはづしゐる    佐藤鬼房
〔7月25日(日)〕ひと魂でゆく気散じや夏の原     葛飾北斎
〔7月26日(月)〕男欲し昼の蛍の掌に匂ふ       小坂順子
〔7月27日(火)〕森の秀は雲と睦めり花サビタ        林翔
〔7月28日(水)〕麻やはらかきところは濡れてかたつむり 齋藤朝比古
〔7月29日(木)〕片影にこぼれし塩の点々たり     大野林火
〔7月30日(金)〕愉快な彼巡査となつて帰省せり    千原草之
〔7月31日(土)〕金閣をにらむ裸の翁かな      大木あまり


【2021年8月のハイクノミカタ】

〔8月1日(日)〕カルーセル一曲分の夏日陰        鳥井雪
〔8月2日(月)〕新婚のすべて未知数メロン切る    品川鈴子
〔8月3日(火)〕東京の白き夜空や夏の果       清水右子
〔8月4日(水)〕直立の八月またも来りけり       小島健
〔8月5日(木)〕片影にこぼれし塩の点々たり     大野林火
〔8月6日(金)〕金魚すくふ腕にゆらめく水明り    千原草之
〔8月7日(土)〕目薬に涼しく秋を知る日かな     内藤鳴雪
〔8月8日(日)〕藍を着古し/棚田の/父祖の/翳となる 上田玄
〔8月9日(月)〕愛情のレモンをしぼる砂糖水      瀧春一
〔8月10日(火)〕きりぎりす飼ふは死を飼ふ業ならむ   齋藤玄
〔8月11日(水)〕品川はみな鳥のような人たち     小野裕三
〔8月12日(木)〕わが畑もおそろかならず麦は穂に  篠田悌二郎
〔8月13日(金)〕置替へて大朝顔の濃紫        川島奇北
〔8月14日(土)〕夫婦は赤子があつてぼんやりと暮らす瓜を作つた 中塚一碧楼
〔8月16日(月)〕求婚の返事来る日をヨット馳す   池田幸利
〔8月17日(火)〕鳥けもの草木を言へり敗戦日    藤谷和子
〔8月18日(水)〕前をゆく私が野分へとむかふ     鴇田智哉
〔8月19日(木)〕日まはりは鬼の顔して並びゐる    星野麦人
〔8月20日(金)〕手花火を左に移しさしまねく     成瀬正俊
〔8月21日(土)〕あづきあらひやひとり酌む酒が好き  西野文代
〔8月22日(日)〕けさ秋の一帆生みぬ中の海       原石鼎
〔8月23日(月)〕杜鵑草遠流は恋の咎として      谷中隆子
〔8月24日(火)〕本捨つる吾に秋天ありにけり    渡部州麻子
〔8月25日(水)〕秋の日の音楽室に水の層        安西篤
〔8月26日(木)〕蜩やチパナスのあたり雲走る     井岡咀芳
〔8月27日(金)〕蟷螂の怒りまろびて掃かれけり    田中王城
〔8月28日(土)〕鶺鴒がとぶぱつと白ぱつと白     村上鞆彦
〔8月29日(日)〕かき冰青白赤や混ぜれば黎      堀田季何
〔8月30日(月)〕誰かまた銀河に溺るる一悲鳴    河原枇杷男
〔8月31日(火)〕ひら/\と猫が乳吞む厄日かな   秋元不死男


【2021年9月のハイクノミカタ】

〔9月1日(水)〕ふんだんに星糞浴びて秋津島     谷口智行
〔9月2日(木)〕彎曲し火傷し爆心地のマラソン    金子兜太
〔9月3日(金)〕秋の風互に人を怖れけり       永田青嵐
〔9月4日(土)〕指は一粒回してはづす夜の葡萄    上田信治
〔9月5日(日)〕あさがほのたゝみ皺はも潦      佐藤文香
〔9月6日(月)〕天女より人女がよけれ吾亦紅      森澄雄
〔9月7日(火)〕九月の教室蟬がじーんと別れにくる   穴井太
〔9月8日(水)〕あめつちや林檎の芯に蜜充たし    武田伸一
〔9月9日(木)〕ビル、がく、ずれて、ゆくな、ん、てきれ、いき、れ  なかはられいこ
〔9月10日(金)〕横ざまに高き空より菊の虻      歌原蒼苔
〔9月11日(土)〕悲鳴にも似たり夜食の食べこぼし  波多野爽波
〔9月12日(日)〕ミステリートレインが着く猿の星   飯島章友
〔9月13日(月)〕紅さして尾花の下の思ひ草      深谷雄大
〔9月14日(火)〕秋日澄み樹のいろ拾ひつづけたる   井越芳子
〔9月15日(水)〕河よりもときどき深く月浴びる   森央ミモザ
〔9月16日(木)〕胡桃割る胡桃の中に使はぬ部屋    鷹羽狩行
〔9月17日(金)〕えりんぎはえりんぎ松茸は松茸   後藤比奈夫
〔9月18日(土)〕少女期は何かたべ萩を素通りに    富安風生
〔9月19日(日)〕柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺     正岡子規
〔9月20日(月)〕赤き茸礼讃しては蹴る女      八木三日女
〔9月21日(火)〕葡萄垂れとしよりの日のつどひ見ゆ  大野林火
〔9月22日(水)〕霧晴れてときどき雲を見る読書    田島健一
〔9月23日(木)〕南海多感に物象定か獺祭忌     中村草田男
〔9月24日(金)〕子規逝くや十七日の月明に      高浜虚子
〔9月25日(土)〕どの絵にも前のめりして秋の人    藤本夕衣
〔9月26日(日)〕櫻の樹だつたのか土龍散步する    片上長閑
〔9月27日(月)〕嫁がねば長き青春青蜜柑       大橋敦子
〔9月28日(火)〕聴診に一生の秋を聴きにけり     橋本喜夫
〔9月29日(水)〕きちかうの開きて青き翅脈かな   遠藤由樹子
〔9月30日(金)〕祝1周年!!!!!!!!!!!!!!!!!!

🌹1年間ありがとうございました🌹(管理人)



【このコーナーについて】
「セクト・ポクリット」は、コロナ禍で句会もままならない2020年10月からスタートしました。その大黒柱のコーナーが、この「ハイクノミカタ」です。各曜日を7名の気鋭の俳人が担当、季節の1句をご紹介。そこらへんの「一句鑑賞」とは一味も二味も違いますよ。シーズン1は、月曜=日下野由季→篠崎央子(2021年7月〜)、火曜=鈴木牛後、水曜=月野ぽぽな、木曜=橋本直、金曜=阪西敦子、土曜=太田うさぎ、日曜=小津夜景さんです。


  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

関連記事

サイト内検索はこちら↓

アーカイブ

サイト内検索はこちら↓

ページ上部へ戻る