取り除く土の山なす朧かな 駒木根淳子【季語=朧(春)】

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取り除く土の山なす朧かな

駒木根淳子


東日本大震災から10年が経った。いろいろとこの10年の経過について報道がなされているが、いまだに解決していない問題も多いようで、心の痛む場面も多い。

作者は福島県のいわき市出身。震災で生家を失った。句集「夜の森」には震災後の故郷の風景を詠んだ句が多く収められている。

掲句は2012年、東日本大震災の翌年の句。除染の光景であろう。公園や民家の庭、農地などあらゆる場所の土が除染のために剝ぎ取られ、積み上げられ、そしてフレコンバッグに詰め込まれて運び出される。私は映像でしかその光景を見たことはないが、特に農家にとっては複雑な思いがあったことと推察される。

除染のためにバックホーが表土を剝ぎ取っている映像を見ると、よくあれだけ薄く正確に作業できるものだと驚嘆するが、それでも5センチくらいは失われるだろう。1センチの表土が作られるには、少なくとも100年はかかると言われており、5センチなら500年だ。その500年の、自然の営々たる営みの結果がゴミとして山と積まれている。さらに農家による土壌改良の歴史もまた徒となってしまったのである。

季語の「朧」は、春になって気温が上昇し、大気中の水分が増加して万物が霞んで見える夜をいう。過去の多くの「朧」の句が、実景とともに季語のイメージを利用して作られているが、掲句はその両方を高い次元で融合させていると感じた。

除染土の山から立ち上る水蒸気によってあたりが霞んでいるという景をともに、土に含まれる長い過去と、放射性物質が無害化されるまでの長い未来が同時に除染土と故郷を覆っているという、目に見えない風景まで表現されている。

「夜の森」(2016年)所収。

鈴木牛後


【執筆者プロフィール】
鈴木牛後(すずき・ぎゅうご)
1961年北海道生まれ、北海道在住。「俳句集団【itak】」幹事。「藍生」「雪華」所属。第64回角川俳句賞受賞。句集『根雪と記す』(マルコボ.コム、2012年)『暖色』(マルコボ.コム、2014年)『にれかめる』(角川書店、2019年)


【鈴木牛後のバックナンバー】
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>>〔20〕昨日より今日明るしと雪を掻く    木村敏男
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>>〔1〕立ち枯れてあれはひまはりの魂魄   照屋眞理子


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