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ピザーラの届かぬ地域だけ吹雪く かくた【季語=吹雪(冬)】

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ピザーラの届かぬ地域だけ吹雪く

かくた


「ピザーラ」は知らなかったが、検索してみると予想通りピザの宅配業者の名前だった(それはそうだ)。

ピザーラは全国展開しているようだが、当然ながら店舗は都会にしかない。人口だけでいえば、かなりの割合の人が注文できるのだろうが、日本中津々浦々というわけにはいかない。北海道では札幌市、旭川市とその近郊だけということで、面積にすればごくわずかだ。

札幌市、旭川市でも、市内ならどこでも届くというわけではないだろう。店舗から遠いところには当然配達してもらえないのではないか。私は宅配ピザを利用したことがないのでわからないが(当然我が家はエリア外なので)、もしかしたら吹雪など悪天候のときには配達エリアが狭くなるという仕組みなのかもしれない。作者の住まいの場所は、通常なら配達してもらえるエリアなのに、今日は吹雪だからと断られたのか。

実際のことはよくわからないが、食べたかったピザが食べられない悔しさを諧謔的に表現していることは確かだ。ただ、この句が面白いのはそれだけではなく、美食、娯楽など快楽的なものを享受して飽きない都会(特に東京)への、恨みがましい目線が見てとれるからだろう。ピザの届く彼の地と届かない当地=都会と田舎、という対立項に、晴天と吹雪、明るさと暗さ、暖かさと寒さ、賑やかさと寂しさというような、さまざまな関係が内包されているとも読めるのである。

同じ連作の中に《ピザーラはどうせ来ないし蕨狩》という句もある。「どうせ来ないし」とい投げやりな言い方に面白味があるが、都会と田舎という図式が明らかすぎて広がりが今ひとつという気もする。それに比べて掲出句は、季語「吹雪」の持つ見通しの利かない危うさというイメージに、憧れを内包した憎しみという複雑な感情が宿っているように思えて、そこに魅力を感じた。

「砂時計」創刊号(文芸同人「北十」発行/2018年)収載。

鈴木牛後


【執筆者プロフィール】
鈴木牛後(すずき・ぎゅうご)
1961年北海道生まれ、北海道在住。「俳句集団【itak】」幹事。「藍生」「雪華」所属。第64回角川俳句賞受賞。句集『根雪と記す』(マルコボ.コム、2012年)『暖色』(マルコボ.コム、2014年)『にれかめる』(角川書店、2019年)


【セクト・ポクリット管理人より読者のみなさまへ】

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