一番に押す停車釦天の川 こしのゆみこ【季語=天の川 (秋)】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

一番に押す停車釦天の川

こしのゆみこ


乗車のバスは進行中。そろそろ降車するバス停だ。近くにあるボタンの位置を確かめて、と。よし。押すぞ。

旅はいい。目的地に着いてからはもちろんのこと、乗り物での移動中も楽しい。

ここには、旅とは書かれていない。だから日常利用のバスの中、と捉えることもできるかもしれないが、〈一番に押す停車釦〉から立ち上がってくる高揚感は旅の心地を思わせる。

〈天の川〉は、夜空を横切るように存在する雲状の光の帯で、それを川に見立てたもの。

どの季節でも見ることができるが、秋の姿が最も明るく美しい。

ちなみに、日本を含む東アジアでは、川に見立てられているが、西洋の言語では、ギリシャ神話において、英雄ヘラクレスが女神ヘラの乳首を吸った時にほとばしった乳と見立てられたことを継承し、「乳の道」と呼ぶ。例えば英語では「Milky Way」(ミルキー・ウェイ)、仏語では「Voie lactée」(ヴォワ・ラクテ)。地球に住む誰をも魅了する光の帯だ。

ピンポーン。

バスを降りると、空には〈天の川〉。地球上でも現実にもありそうで、「わー綺麗、夜行便にしてよかった」と言う声が聞こえてきそう。

それと同時に、このバスは、〈天の川〉行き宇宙バスだったんだ、とも思えてくる。

そして、この一句そのものが、読者の想像力を呼び起こし、読者を宇宙旅行に連れていってくれる乗り物であったことに気づくのだ。

『コイツァンの猫』(2009年)所載。

(月野ぽぽな)


🍀 🍀 🍀 季語「天の川」については、「セポクリ歳時記」もご覧ください。


【執筆者プロフィール】
月野ぽぽな(つきの・ぽぽな)
1965年長野県生まれ。1992年より米国ニューヨーク市在住。2004年金子兜太主宰「海程」入会、2008年から終刊まで同人。2018年「海原」創刊同人。「豆の木」「青い地球」「ふらっと」同人。星の島句会代表。現代俳句協会会員。2010年第28回現代俳句新人賞、2017年第63回角川俳句賞受賞。
月野ぽぽなフェイスブック:http://www.facebook.com/PoponaTsukino

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

関連記事

サイト内検索はこちら↓

アーカイブ

サイト内検索はこちら↓

ページ上部へ戻る