止まり木に鳥の一日ヒヤシンス  津川絵理子【季語=ヒヤシンス(春)】

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止まり木に鳥の一日ヒヤシンス 

津川絵理子


わが家は一部屋しかないのだけれど、なんとか快適に住もうとあれやこれやと工夫しているうちに、おのずと物のない、修行僧みたいな暮らし方をするようになった。幸い日本人なので、物がなくても周囲に不審がられることはない。うちに遊びにくる人はみんな、からっぽの部屋を見て「お。なるほど、これが禅なんだね!」と、いいように誤解してくれる。

物を置いたり飾ったりする余裕のない暮らしの中で、定期的にとりかえられ、しかも晴れやかな花は、空間のアクセントとしてとても重宝する。いまの季節はヒヤシンスなんか、とてもいい。

  止まり木に鳥の一日ヒヤシンス  津川絵理子

せせこましさのない明快なデッサンが、窓いっぱいの春光を室内に呼び込んだ一句だ。止まり木の鳥と、茎の先端のヒヤシンスとのあいだに、ぽってりとした呼応があるのも愉しい。ってゆーか、ヒヤシンスって遠くからみると、完全にボリューミーな鳥じゃないですか。ヒヤシンスコンゴウという名のインコだっていますよね。

津川絵理子『夜の水平線』は、対象を認識する際の、軽すぎず重すぎない重量感覚がすばらしい佳書。巧みすぎて、ときどきホラーな様相を呈しているくらい。季語を立てすぎず、叙述となめらかに響きあう職人技も美しい。そんな中、掲句などは見過ごされがちな小品にあたると思うけれど、こうした大人目線の絵本のようなシンプルかつデザイン性の高い認識も、日常詠が中心であるこの句集の効果的なアクセントになっていると思った。  

小津夜景


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【執筆者プロフィール】
小津夜景(おづ・やけい)
1973年生まれ。俳人。著書に句集『フラワーズ・カンフー』(ふらんす堂、2016年)、翻訳と随筆『カモメの日の読書 漢詩と暮らす』(東京四季出版、2018年)、近刊に『漢詩の手帖 いつかたこぶねになる日』(素粒社、2020年)。ブログ「小津夜景日記



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