ハイクノミカタ

麗しき春の七曜またはじまる 山口誓子【季語=春(春)】


麗しきの七曜またはじまる

山口誓子

堀切さんよりこのページのお話をいただいた時、好きな曜日を選ばせて貰えるとのことだったので、ちょっと考えて水曜日にしていただいた。

なぜだか「水」に近寄りたくなるのは魚座だからか?

週半ばで注目を浴びにくい(?)のもいいような気がした。

 美しいのは月曜日の子ども
 品のいいのは火曜日の子ども
 べそをかくのは水曜日の子ども
 旅に出るのは木曜日の子ども
 惚れっぽいのは金曜日の子ども
 苦労するのは土曜日の子ども
 可愛く明るく気立ての良いのはお休みの日に生れた子ども

昔々嫌々通っていたピアノの先生のお宅でレッスンの順番を待つ間に、先生が用意されていた本を読んでいたのだが、中でも繰り返し読んだお気に入りの一冊が『マザーグースのうた』(谷川俊太郎訳)だった。

中でも「これはジャックの建てた家」というのと、この曜日が出てくる歌は印象に残っていた。

光市にある障がい者支援施設が運営する帆布工房は、販売も含めて、デザイン、染め、縫製、刺繍などさまざまな工程を障がい者の方たちがそれぞれの得意な技を生かしながらスタッフと一緒に行っている。

私が購入した色鮮やかな太陽のような刺繍をほどこしたバッグの作者は、生年月日を伝えると、一秒もかからず私の生まれた曜日を答えられた。

後で確認したらやはり合っていた。

麗しき春の七曜またはじまる 山口誓子

誓子の作品の中では殊に明るい印象の句。何度か巡ってくる春の一週間を、これから来る日々を楽しみに待ち望む気持ちがゆったりとした言葉運びで語られていて、私の一週間もこのようにはじまるのでは?と錯覚しそうになる。しばらく続きそうな麗しい時間を予感させる「また」のよろしさ。

ところで、私が何曜日生まれだったかは、「当たってないだろ!!」と突っ込まれそうなので、黙っとこう。

杉山久子


【執筆者プロフィール】
杉山久子(すぎやま・ひさこ)
平成元年より作句。第2回芝不器男俳句新人賞受賞。句集『栞』他4冊。紀行文集『行かねばなるまい』

早くから才能を発揮し、芝不器男俳句新人賞、山口県芸術文化振興奨励賞に続き、前作『泉』では第1回姨捨俳句大賞を受賞した著者。宇宙の中の一存在として詠み、しなやかで独創的な感性が煌めく注目の第四句集。

◆帯より

冬星につなぎとめたき小舟あり

過ぎてゆく日常に栞をはさむように句を作っているのかもしれないと、少し前から感じるようになった。
言葉にならないけれど言葉を取り巻くもの、言葉と言葉のあわいにあるものの輝きも、ともに受け取り、味わってゆきたい。(杉山久子

1997年7月~1999年4月、
月刊俳句新聞『子規新報』に連載された
「お遍路は風まかせ」が書籍化!

興味本位からスタートした
ドタバタ四国遍路紀行……

180ページの本書の下端両角には
表紙画も担当した流水彩子のパラパラ漫画付き。
装丁は律川エレキ。


2020年10月からスタートした「ハイクノミカタ」。【シーズン1】は、月曜=日下野由季→篠崎央子(2021年7月〜)、火曜=鈴木牛後、水曜=月野ぽぽな、木曜=橋本直、金曜=阪西敦子、土曜=太田うさぎ、日曜=小津夜景さんという布陣で毎日、お届けしてきた記録がこちらです↓



【2024年4月の火曜日☆阪西敦子のバックナンバー】
>>〔119〕初花や竹の奥より朝日かげ    川端茅舎

【2024年3月の火曜日☆鈴木総史のバックナンバー】
>>〔14〕芹と名がつく賑やかな娘が走る 中村梨々
>>〔15〕一瞬にしてみな遺品雲の峰 櫂未知子
>>〔16〕牡丹ていっくに蕪村ずること二三片 加藤郁乎

【2024年3月の水曜日☆山岸由佳のバックナンバー】
>>〔5〕唐太の天ぞ垂れたり鰊群来 山口誓子
>>〔6〕少女才長け鶯の鳴き真似する  三橋鷹女
>>〔7〕金色の種まき赤児がささやくよ  寺田京子

【2024年3月の木曜日☆板倉ケンタのバックナンバー】
>>〔6〕祈るべき天と思えど天の病む 石牟礼道子
>>〔7〕吾も春の野に下りたてば紫に 星野立子

【2024年2月の火曜日☆鈴木総史のバックナンバー】
>>〔10〕足跡が足跡を踏む雪野かな 鈴木牛後
>>〔11〕父の手に負へぬ夜泣きや夏の月 吉田哲二
>>〔12〕トラックに早春を積み引越しす 柊月子
>>〔13〕故郷のすすしの陰や春の雪 原石鼎

【2024年2月の水曜日☆山岸由佳のバックナンバー】
>>〔1〕雪折を振り返ることしかできず 瀬間陽子
>>〔2〕虎の上に虎乗る春や筥いじり 永田耕衣
>>〔3〕人のかほ描かれてゐたる巣箱かな 藤原暢子
>>〔4〕とぼしくて大きくて野の春ともし 鷲谷七菜子

【2024年2月の木曜日☆板倉ケンタのバックナンバー】
>>〔1〕寒卵良い学校へゆくために 岩田奎
>>〔2〕泥に降る雪うつくしや泥になる 小川軽舟
>>〔3〕時計屋の時計春の夜どれがほんと 久保田万太郎
>>〔4〕屋根替の屋根に鎌刺し餉へ下りぬ 大熊光汰
>>〔5〕誰も口にせぬ流氷の向かうの地 塩崎帆高

【2024年1月の火曜日☆土井探花のバックナンバー】
>>〔5〕初夢のあとアボカドの種まんまる 神野紗希
>>〔6〕許したい許したい真っ青な毛糸 神野紗希
>>〔7〕海外のニュースの河馬が泣いていた 木田智美
>>〔8〕最終回みたいな街に鯨来る 斎藤よひら
>>〔9〕くしゃみしてポラリス逃す銀河売り 市川桜子

【2024年1月の木曜日☆浅川芳直のバックナンバー】
>>〔5〕いつよりも長く頭を下げ初詣 八木澤高原
>>〔6〕冬蟹に尿ればどつと裏返る 只野柯舟
>>〔7〕わが腕は翼風花抱き受け 世古諏訪
>>〔8〕室咲きをきりきり締めて届きたり 蓬田紀枝子


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