性あらき郡上の鮎を釣り上げて 飴山實【季語=鮎(夏)】


性あらき郡上のを釣り上げて

飴山實
『飴山實全句集』平成15年

飴山は俳誌『風』からキャリアをスタートした俳人。農芸化学の研究者でもあり、山口大学の教授を務めていた。有名句に〈小鳥死に枯野よく透く籠のこる〉〈蚊を打つて我鬼忌に厠ひゞきけり〉などがある。

昭和30年代までの飴山俳句は兜太をはじめとする前衛系作家の影響を強く受けており、たとえば昭和36年の第9回現代俳句協会賞応募作『島』は〈起重機にいた貌を岸壁で陽に曝す〉〈海豚飼われ雑多な芥で皺む湾〉〈太陽へのぼる電工島枯れて〉といった句から成る連作であった(なお、受賞者は飴山との決戦を制した赤尾兜子)。

先ほど紹介した有名句はどちらも句集『少長集』(昭和46年)の収録句。この句集以降、飴山は芝不器男や安東次男の研究などをしつつ徐々に定型の練度を高めていく。

掲句は没後の2003年に編まれた『飴山實全句集』収録。「郡上鮎」としてブランド化もされている郡上の鮎釣りを詠んだ句だが、個人的にはいわゆる吟行句の域を出ない句であると感じた。郡上という固有名詞から読者が読み取れる情報は少なく、そもそもなぜ郡上の鮎が…え?この鮎を食ってみろって?急になんですか…いや、もちろんいただけるなら食べますよ、食べますけど…

パク

なんちゅうもんを食わせてくれたんや…
なんちゅうもんを…

こんな旨い鮎は食べたことない…
いや、そやない、何年か前に食べた記憶がある。
旨い、ほんま旨い…
これに比べると山岡さんの鮎はカスや。

郡上の澄んだ川やきらめく鮎の姿、塩焼きの香りが眼前に立ち現れてくる…
そうか…!俳句に必要なのは知識や技術なんかじゃなく、人を思う心だったんだ…

プルルル…

お疲れ様です。細村です。今から車で郡上八幡に行くので、明後日まで休暇をいただきます。はい。よろしくお願いします。…打ち合わせ?あ、リモートで参加します。川が近いので音が入りますが、よろしくお願いします。時間もありませんので、そろそろ失礼します。

ガチャ ツ-ツ-

細村星一郎


【執筆者プロフィール】
細村星一郎(ほそむら・せいいちろう)
2000年生。第16回鬼貫青春俳句大賞。Webサイト「巨大」管理人。


【細村星一郎のバックナンバー】
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>>〔7〕白馬の白き睫毛や霧深し 小澤青柚子
>>〔6〕煌々と渇き渚・渚をずりゆく艾 赤尾兜子
>>〔5〕かんぱちも乗せて離島の連絡船 西池みどり
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