【秋の季語=仲秋-晩秋(9-10月)】鶺鴒
セキレイ。水辺で見かけることが多い小鳥。
長い尾を上下にしきりに動かすのが鶺鴒の特徴であることから、「石叩き」「庭叩き」とも呼ばれる。
種類としてはハクセキレイ、セグロセキレイ、キセキレイなどがある。俳句では漢字で「鶺鴒」と書かれることが多いが、画数が多いことから「せきれい」と開かれることもある。
秋の季語とされているのは、七十二候の第四十四候に「鶺鴒鳴(せきれいなく)」があることにもよる。「白露」の第二候で、9月12日ごろである。
日本書紀には、日本神話の国産みの伝承の一つとして、イザナギとイザナミが性交の仕方が分からなかったところにセキレイが現れ、セキレイが尾を上下に振る動作を見て性交の仕方を知ったという内容の異伝に関する記述がある。当時、セキレイは「にはくなふり」と称されていたが、「稲負鳥」の意という説もある。
【鶺鴒(上五)】
鶺鴒よこの笠叩くことなかれ 正岡子規
鶺鴒のとどまり難く走りけり 高浜虚子
鶺鴒に鳴き応へけり山の鳥 西山泊雲
黄鶺鴒飛ぶ瀬を竹の皮走り 川端茅舎
鶺鴒の一瞬われに岩のこる 佐藤鬼房
鶺鴒の止まれば光る磧石 山田弘子
鶺鴒の色こぼしつつ飛びたてり 小川晴子
鶺鴒がとぶぱつと白ぱつと白 村上鞆彦
【鶺鴒(中七)】
餌をくはへゐる鶺鴒の腹話術 堀口星眠
高く飛ぶときも鶺鴒波描き 本井英
天に地に鶺鴒の尾の触れずあり 本間まどか
【鶺鴒(下五)】
よき川のいよよつめたき黄鶺鴒 岡井省二
【ほかの季語と】
せきれいとおぼしきかげや春の雪 久保田万太郎
庭の水恋ひて鶺鴒松の内 山口青邨