【秋の季語】新酒/今年酒

【秋の季語=晩秋(10月)】新酒/今年酒

【解説】その年の新米で醸造した酒のこと。いまでは一年中、お酒がつくれるようになりましたが、昔は、新米が穫れるとすぐに造ったので、秋の季語となっています。「新酒出来ましたよ」のしるしが、以下の杉玉。

杉玉の飾りは元々、奈良県にあるお酒の神様を祭る大神(おおみわ)神社の文化。大神神社では、毎年11月14日になると「おいしいお酒ができるように」という願いを込めて杉玉を飾ってきました。その風習が江戸時代の初期頃から全国の酒蔵に広がり、今ではさまざまな場所で杉玉が見られるようになりました。

スギの木は、大神神社がある三輪山に多く自生する木で、三輪山の杉は古来より「聖なるもの」とされてきたため、杉を使った杉玉ができたとされています。

俳句では、〈杉玉の新酒のころを山の雨  文挾夫佐恵〉なんていう句もあります。この「山」も「聖なる山」であることをイメージすると、また新酒の味わいも変わってきそうですね。

【関連季語】新米、濁酒、寒造など。


【新酒(上五)】
新酒くまん四十九年の秋は何 加舎白雄
新酒や鳴雪翁の三オンス  正岡子規
新酒よし蜂の子も可ならずとせず 富安風生
新酒上りて燈明あかし庫の奥  野村泊月
新酒酌む三河訛と出羽訛 中根惠子
新酒酌む泉下のひとと語るべく 近藤栄治
新酒酌む奥の暗きがわが寝所 中西夕紀
新酒つぐ花より赤き唇や 江渡華子

【新酒(中七)】
松風に新酒を澄ます山路かな 支考
鬼貫や新酒の中の貧に處ス 蕪村
狐啼いて新酒の醉のさめにけり  正岡子規
呉れたるは新酒にあらず酒の粕 高浜虚子
憂あり新酒の酔に托すべく  夏目漱石
風をあるいてきて新酒いつぱい 種田山頭火
征く君に熱き新酒とおぼえけり(波郷氏出征)  石橋秀野
人が酔ふ新酒に遠くゐたりけり 加藤楸邨
ことほぐに古酒も新酒もなかりけり 上田五千石
杉玉の新酒のころを山の雨    文挾夫佐恵
国取りの国なる新酒汲みにけり  有馬朗人
高嶺星わけなく新酒酌みにけり 武田伸一
角打ちの新酒の淡し能登の塩 檜山哲彦
一点を見つめ新酒のひと口目  寒河江桑弓
爺ひとり住まひ新酒をコップに酌む 小澤實
ふるさとの新酒の出たる上野かな  谷岡健彦

新酒(下五)】
風に名のついて吹くより新酒かな   園女
牛売りし綱肩にあり新酒汲む 西山泊雲
くゝ〳〵とつぐ古伊部の新酒かな 皿井旭川
貧農の足よろよろと新酒かな 飯田蛇笏
膝がしらたゝいて酔へる新酒かな 大橋櫻坡子
袖口のからくれなゐや新酒つぐ  日野草城
酔うてよき越後のどぶといふ新酒 後藤比奈夫
三輪山の月をあげたる新酒かな  石嶌岳
古九谷の瓶子にそそぐ新酒かな 伊藤敬子
東京は西に山なす新酒かな  広渡敬雄
斯くなるはEST! EST!(東へ 東へ)といふ新酒 中原道夫
そばかすをくれたる父と新酒汲む 仙田洋子 



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