季語・歳時記

【秋の季語】馬鈴薯/馬鈴薯 ばれいしよ

【秋の季語(三秋=8月〜10月)】馬鈴薯/馬鈴薯 ばれいしよ

【解説】日本で生産されているじゃがいものうち、15パーセントは「ポテトチップス」になっているようです。その他の85パーセントは、グラタンやコロッケ、ポテトサラダなどになっているようです。

ところで俳句では「馬鈴薯」と書いて「じゃがいも」と読むことがあります。世間一般で「馬鈴薯」と書けば、「ばれいしょ」と読むわけですが、どちらも4音で音数からは区別がつきにくいので、「じゃがいも」とひらがなで表記することもあります。ただ、「馬鈴薯」と書いて「じゃがいも」と読むことも多いかもしれません。

じゃがいもといえば、北海道! ですが、日本にじゃがいもを持ち込んだのは、オランダ人。ジャワのジャガトラ港経由(現ジャカルタ)だったので、「ジャガタラ芋」と呼ばれ、それが「じゃがいも」の由来となったと言う説がありますが、本当かなあ。江戸時代になる前、16世紀末のことでした。

日本でじゃがいもといえば「男爵」と「メークイン」、あるいは「インカの目覚め」あたりがメジャーどころですが、ヨーロッパなどにいくと、こんなにじゃがいもってたくさん種類があるんだ、と驚きますね。

じゃがいもは世界で約2,000の品種があるそうですが、現在の日本で栽培されているのは、約20品種程度しかないそうです。

ところで、「貧者のパン」という言葉、ご存知ですか?

南米生まれのじゃがいもは、インカ帝国滅亡ののち、スペインへ。そこから、フランスやドイツの啓蒙君主たちが普及につとめ、わずか五百年の間に全世界に広がった。どこでも栽培できて、栄養価の高いじゃがいもは、かつて「貧者のパン」として、歴史を動かしてきたのです。

有名どころでは、アイルランドの大飢饉がありますが、ソ連崩壊にもじゃがいもが関係している? 気になった方は、伊藤章治さんの『ジャガイモの世界史―歴史を動かした「貧者のパン」』を読んでみてください。 

ちなみに、わたしは居酒屋にいくと、必ずポテサラを頼みます。ポテサラを頼めば、その店の実力がわかります。ポテサラのまずい店に、良店なし。

マッキー牧元さんが監修されている『ポテサラ酒場』もいい本ですよ。

【関連季語】馬鈴薯植う(春)、馬鈴薯の花(夏)、新じやが(夏)、長薯、甘薯、自然薯、とろろ汁、むかごなど。


【馬鈴薯】
かなしくて馬鈴薯を掘りさざめくも 石田波郷
馬鈴薯を夕蝉とほく掘りいそぐ 水原秋櫻子
馬鈴薯の顔で馬鈴薯堀り通す  永田耕衣
マダムの外寝馬鈴薯個々にころがり 赤尾兜子
朝日がタッチ舗道に見つけた無疵な馬鈴薯 磯貝碧蹄館
掘るほどに広き馬鈴薯畑なる 石倉京子
万有引力あり馬鈴薯にくぼみあり 奥坂まや
馬鈴薯を洗ひ林檎のやうであり 野口る理

【じゃがいも】
じゃがいもの北海道の土落す 中田品女
じやがいも売り且秋の薔薇たばね売る 小池文子
田の母よぼくはじゃがいもを煮ています 清水哲男

【その他】
肉・葱・馬鈴薯ごつた煮にして走り梅雨 能村登四郎
馬鈴薯の湯気立ててゐる野分かな 岸本尚毅


  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

関連記事

  1. 【夏の季語】バナナ
  2. 【新年の季語】七種(七草)【節句】
  3. 【冬の季語】マフラー
  4. 【冬の季語】冬至
  5. 【秋の季語】九月
  6. 【冬の季語】鬼やらう
  7. 【春の季語】春野
  8. 【春の季語】遠足

おすすめ記事

  1. 俳人・広渡敬雄とゆく全国・俳枕の旅【第70回】 浅草と久保田万太郎
  2. 「野崎海芋のたべる歳時記」牡蠣とほうれん草のガーリックソテー
  3. 綿入が似合う淋しいけど似合う 大庭紫逢【季語=綿入(冬)】
  4. ゆる俳句ラジオ「鴨と尺蠖」【第15回】
  5. 鉄瓶の音こそ佳けれ雪催 潮田幸司【季語=雪催(冬)】
  6. 胎動に覚め金色の冬林檎 神野紗希【季語=冬林檎(冬)】
  7. 【新年の季語】嫁が君
  8. 行く雁を見てゐる肩に手を置かれ 市村不先【季語=行く雁(春)】
  9. 「野崎海芋のたべる歳時記」蕪のクリームスープ
  10. 神保町に銀漢亭があったころ【第20回】竹内宗一郎

Pickup記事

  1. 「パリ子育て俳句さんぽ」【2月26日配信分】
  2. 背広よりニットに移す赤い羽根 野中亮介【季語=赤い羽根(秋)】
  3. 【春の季語】白魚
  4. 【秋の季語】曼珠沙華
  5. 天窓に落葉を溜めて囲碁倶楽部 加倉井秋を【季語=落葉(秋)】
  6. 胡桃割る胡桃の中に使はぬ部屋 鷹羽狩行【季語=胡桃(秋)】
  7. 神保町に銀漢亭があったころ【第18回】谷岡健彦
  8. 【連載】俳人のホンダナ!#5 渡部有紀子
  9. 神保町に銀漢亭があったころ【第25回】山崎祐子
  10. 【冬の季語】落葉
PAGE TOP