行きつけの酒場……?
内村恭子(「天為」同人)
行きつけの酒場を持つということに憧れていた。檀一雄が描く文壇バーみたいなところ。でも都会のバーは、女ひとりで行くと少し気後れして、「常連さん」のハードルは高かった。
「天為」の編集を手伝うようになり、編集室から徒歩30秒、駅への帰り道沿いに「銀漢亭」があった。仕事帰りにハッピーアワーの生ビールを一杯飲んで帰るようになり、行けば必ず知り合いの俳人がいた。早い時間だと伊那男さんとおしゃべりしたり、お料理のレシピを教わるのも楽しかった。句会の後の遅い時間に顔を出すと、また誰かしら知り合いの俳人が飲んでいて、こんなに居心地のよいお店は他にはなかった。
銀漢亭は、「超結社」の楽しさを教えてくれる場所でもあった。毎月第四月曜日に開かれていた超結社の句会「湯島句会」で、同世代の俳人と知り合えたのはとても大きな収穫だった。
記録を見てみると、私は2010年4月の第28回から2013年5月の第65回まで参加。第66回の最終回は、天為の句会後、駆けつけている。毎回、立派な句会報(冊子)が作られ、エッセイも2度程書かせてもらった。
その後も季節ごとの「Oh!句会」に時々参加していたが、何より好きだったのが、選句を終えグラスを持って銀漢亭の外の席、というか路上で仲間とおしゃべりする時間。ささやかな常連さん気分を味わえたからだと思う。
銀漢亭が縁でお世話になった方々への感謝は、ここには書ききれない。「湯島句会」への魅力的なご案内メール「混雑(混沌?)と刺激へようこそ!」を下さった秋葉男さん。句会の度にプロ顔負けの焼きそばを作ってくれた清人さん、俳人らしい吟行の旅へ誘ってくれたのりをさん、総合誌への賞の応募を続けるよう励ましてくれた一平さん、などなど。結社の創立パーティーに参加させていただいたのも「銀漢」が初めてだった。マスコミ関係の方が多かったためか、句会の他の集まりも企画力が抜群で、華やかで活力があった。
2020年3月31日、飛さんの来日予定に合わせ銀漢亭を予約していたのに、結局、夜間外出の自粛ということで行けなかったのを、今でもちょっと悔やんでいる。
【執筆者プロフィール】
内村恭子(うちむら・きょうこ)
1965年東京生まれ。2002年「天為」入会。2008年同人。2009年天為新人賞。2013年句集に『女神(ヴィーナス)』。現在、天為編集室、国際俳句交流協会事務局勤務。俳人協会会員。