ハイクノミカタ

こまごまと大河のごとく蟻の列 深見けん二【季語=蟻(夏)】

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: eye-2horikiri--1024x538.png

こまごまと大河のごとく蟻の列

深見けん二


「こまごまと」と「大河」というふたつの言葉は、一見すると矛盾している。蟻の列は、大河のようであるが、やはり「こまごまと」している。つまり、この表現は、自分で書いたものを、みずからの手で二重線を引いて抹消するような、そんな手つきである。もしこれが単に「大河」に見立てただけならば、たんなる嘘になってしまうのだが、この抹消の身振りがあることによって、現実から5センチほど浮かび上がった世界の描写となっている。『深見けん二俳句集成』(2016)より。(堀切克洋)



【セクト・ポクリット管理人より読者のみなさまへ】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

関連記事

  1. 抱きしめてもらへぬ春の魚では 夏井いつき【季語=春の魚(春)】
  2. もろ手入れ西瓜提灯ともしけり 大橋櫻坡子【季語=西瓜提灯】
  3. 秋風や眼中のもの皆俳句 高浜虚子【季語=秋風(秋)】
  4. 恋ふたつ レモンはうまく切れません 松本恭子【季語=レモン(秋)…
  5. 影ひとつくださいといふ雪女 恩田侑布子【季語=雪女(冬)】
  6. 逢曳や冬鶯に啼かれもし 安住敦【季語=冬鶯(冬)】
  7. ポメラニアンすごい不倫の話きく 長嶋有
  8. ライオンは人を見飽きて夏の果 久米祐哉【季語=夏の果(夏)】

おすすめ記事

  1. 麻服の鎖骨つめたし摩天楼 岩永佐保【季語=麻服(夏)】
  2. 【クラファン目標達成記念!】神保町に銀漢亭があったころリターンズ【12】/飛鳥蘭(「銀漢」同人)
  3. 「パリ子育て俳句さんぽ」【11月20日配信分】
  4. 【新年の季語】春の七種(七草)
  5. 【連載】もしあの俳人が歌人だったら Session#16
  6. 紅梅や凍えたる手のおきどころ 竹久夢二【季語=紅梅(春)】
  7. 【秋の季語】小鳥来る
  8. 蓮ほどの枯れぶりなくて男われ 能村登四郎【季語=枯蓮(冬)】
  9. 鳴きし亀誰も聞いてはをらざりし 後藤比奈夫【季語=亀鳴く(春)】
  10. 【冬の季語】冬麗

Pickup記事

  1. 【新連載】久留島元のオバケハイク【第1回】「龍灯」
  2. 【夏の季語】夏の夢
  3. 寒月下あにいもうとのやうに寝て 大木あまり【季語=寒月(冬)】
  4. 【毛の俳句】
  5. 中干しの稲に力を雲の峰 本宮哲郎【季語=雲の峰(夏)】
  6. 【クラファン目標達成記念!】神保町に銀漢亭があったころリターンズ【14】/野村茶鳥(屋根裏バル鱗kokera店主)
  7. 【秋の季語】山椒の実
  8. 「野崎海芋のたべる歳時記」苺のシャンティイ風
  9. 【連載】新しい短歌をさがして【3】服部崇
  10. 神保町に銀漢亭があったころ【第1回】武田禪次
PAGE TOP