【夏の季語=仲夏(6月)】
泰山木(泰山木、学名:Magnolia grandiflora)は、仲夏(梅雨入り前くらいの新緑の時期)に白い9枚の大きな花びらが咲く常緑の高木。「モクレン科モクレン属」に属するので「木蓮」(春の季語)に似るが、もっと大ぶりである。
花の形から「大盞木」という漢字も当てられるといわれる(盞は「さかずき」)が、現在では「泰山木」の字を充てるのが一般的。
泰山木は、明治初年に北米からやってきた渡来樹なので、近代的な季語のひとつ。現在では、日本など世界中で広く植栽されている。
「泰山木の実」は季語ではないが、明示するために、長いけれど省略せずに「泰山木の花」または「泰山木咲く」で季語とすることが多い。
【泰山木の花(上五)】
泰山木咲きて法王常に老ゆ 中村草田男
泰山木ひらき即ち古びに入る 橋本多佳子
泰山木けふの高さの一花あぐ 岸風三楼
泰山木巨らかに息安らかに 石田波郷
泰山木樹頭の花を日に捧ぐ 福田蓼汀
泰山木の花に怒りの相を見し 波多野爽波
泰山木の花より泛かび昼の月 林田紀音夫
泰山木の花に身を載せ揺られたし 林昌華
泰山木昨日の花に錆にじみ 西村和子
泰山木の花にきのふとけふの白 村上喜代子
泰山木の花はずれかかった冠 こしのゆみこ
【泰山木の花(中七)】
昂然と泰山木の花に立つ 高浜虚子
国賓に泰山木の花ひらく 京極杞陽
夢殿や泰山木の花ひらく 穴井太
あけぼのや泰山木は蠟の花 上田五千石
ロダンの首泰山木は花得たり 角川源義
梅雨久し泰山木は花腐ち 高濱年尾
応援歌泰山木は咲かむとす 草深昌子
日のさして泰山木の低き花 岸本尚毅
夜は花の泰山木に凭れゐる 八田夕刈
【泰山木の花(下五)】
壺に咲いて奉書の白さ泰山木 渡辺水巴
二階の灯とんで泰山木の花 細川加賀
水迄も匂ふ泰山木の花 星野椿
この家と共に泰山木の花 稲畑汀子
十字架の高さ泰山木の花 岬雪夫
天ばかり仰ぎて泰山木の花 山田暢子
おとろへは突と泰山木の花 鷹羽狩行
空に突きあたりて泰山木ひらく 柴田佐知子
近未来見たり泰山木の花 麻里伊
風に日に人に泰山木開く 稲畑廣太郎