【秋の季語=仲秋-晩秋(9月ー10月)】秋雨
秋に降る雨、つまり「秋の雨」のことだが、「の」という助詞を欠いた「秋雨」という語は、古くより詩歌において用いられてきたために、だいぶ秋らしくなってから降る雨を思わせる。つまり、葉を色づかせていく雨である。
秋雨の和歌といえば、
秋の田のかりほの庵の苫をあらみわが衣手は露にぬれつつ
という小倉百人一首の「第一番」、天智天皇が詠んだとされる作が有名。夜に泊まりで田の番をする農民を思って詠んだ歌であり、秋の夜の静かな雰囲気を思わせる。
秋には一日中やむことのない長雨もあれば、少し降ってやんでしまう「秋時雨」もあるが、いずれも万葉の時代から詠まれてきたもの。たとえば、秋の時雨を詠った歌には、
黄葉を散らす時雨に濡れて来て君が黄葉をかざしつるかも
がある。
【秋雨(上五)】
あきさめや肌つつみゆく旅衣 鈴木しづ子
秋雨の新居はじめて電話鳴る 皆吉司
秋雨や人を悼むに筆の文 小島健
秋雨のなかの小鉢のやうな花 彌榮浩樹
【秋雨(中七)】
と見る間に秋雨の庭暮れて無し 松本たかし
京が好きこの秋雨の音も好き 中村吉右衛門
男の傘借りて秋雨音重し 殿村菟絲子
茶(チャイ)飲んでゆかれよ秋雨上がるまで 中原道夫
【秋雨(下五)】