【読者参加型】コンゲツノハイクを読む【2026年9月分】


【読者参加型】
コンゲツノハイクを読む
【2026年9月分】


月末の恒例行事!「コンゲツノハイク」から推しの1句を選んで200字評を投稿できる読者参加型コーナーです。みなさんに未来の名句を探していただいています。今月は、9名の皆様にご参加いただきました。


味噌汁に対流のある夏至夕べ
井上絃
「雪華」
2026年月号より

味噌汁に火をかけて温め直しているのだろうか、電子レンジで冷えた味噌汁をチンしているのだろうか。味噌汁の温まり方に対流があることの発見。「味噌汁」という極端に生活的なものに「対流」という非生活的な言葉をぶつけたことで、椀の中に小さな宇宙が発生している。「湯気」「椀」「豆腐」などに目が行くところを、物理現象への視点の発見。夏至という一年で太陽の運動が極まる日に、「対流」が呼応する。
(押見げばげば)


炊き過ぎて三日三晩の蕗御飯
鈴木伸一
「秋麗」
2026年8月号より

初夏になると水辺には蕗が生え始める。キラキラとした日差しの中に1本1本丁寧に蕗を摘んで行く。摘んでいると、少しだけ少しだけで良いと自分に言い聞かせて蕗を摘んでいるのだが、いつの間にか少しだけの筈が、籠を見て見ると籠を溢れん許りに摘んでしまった。少しだけと思っていたので少しだけ持って帰ろうと思うが、雑草ならともかく、摘んだのは、食用の蕗である。もったいないので全部持って帰ることにしたが、三日三晩蕗三昧になった作者であった。(杉森大輔/「ホトトギス」「いつき組」)


夜濯やまだ旅先にあるこころ
市原みお
「南風」
2026年9月号より

季語は「夜濯」で夏。旅行から帰ってきて、旅の洗濯物をその日の夜に洗っている。旅の余韻に浸っている場面だ。「こころ」のひらがな表記がやさしく、大人にも子供にも旅はいいものだという気持ちに、読者も共感する。「まだ」とあるので、この夜濯は旅から数日後のことと捉えてもよいかもしれない。それにしても。これだけ層の厚い南風の会員がいるなかで、ほぼ毎号コンゲツノハイクの7句に選ばれている市原みおさん、すごい。(千野千佳/「蒼海」)


明日帰る荷物の上の夏帽子
雪岡久代
「南風」
2026年9月号より

帰省先からか、旅行の最終日の景か。キチンとした性格も読みとれる。近年の猛暑から身を守るには、紫外線対策や熱中症予防に欠かせない、夏帽子。大きく分けると、ハット・キャップ・サンバイザーの3種類。つばの広いキャペリンハットは、日よけ対策の定番として人気。夏らしさを演出したいなら、カンカン帽やパナマハットがもってこい。天然素材が、見た目にも涼し気。どんな夏帽子でだったのでしょうね。(野島正則/「青垣」「平」「noi」)


老鶯や山割れさうに風はらむ
宮前良子
「橘」
2026年9月号より

老鴬、夏鴬の力強い縄張りを主張する鳴き声にあわせ、台風を思わせるほど強い風。山を割るほどに荒々しくかつ強靭なこの二つが、黒い猛々しいほどの夏の緑を孕む。そしてこの「はらむ」から立ち上がる、生まれ出るものへ思いをめぐらせるとき、真夏の恐ろしいほどに美しい景色がまるで魔笛の歌のように強く響きわたる気がし、そこのとても素敵な句と選ばせていただきました。(haruwo/「麒麟」)


百合開く徐々に位牌の見えぬほど
小濱けえ子 
「閏」
2026年8月号より

通夜や葬式で故人の遺影の周りには花がびっしり埋め尽くされた祭壇が設けられている。遺影の前に立つ位牌が隠れてしまう丁度その位置に大きな百合の花が開いてくる。大きな嘴を持った鳥がその嘴を開くように百合は大胆に開き強い香りを発散してくる。故人の魂が宿る位牌は為す術もなく隠され、微笑む遺影が残される。百合の旺盛な生命力に触れ改めて、葬式は死者のためではなく生者のためにあるという一節を思い出した。(貴田雄介/「台北俳句会」「We」)


天の川大人を赦すすべり台
大沼惠美子
「樺の芽」
598号より

空気がきれいで街灯りの少ない夜の公園。「天の川」が大きくかかる星空の下に、「すべり台」のシルエットが浮かぶ。子供たちのいない夜の公園、今なら、大人のあなたも滑っていいよ。シンプルに今を生きていた子どもの頃の気分がふとよみがえる。雑事に塗れた現実の暮らしに慣れてしまって、忘れていた大切なことを、思い出させてくれる「すべり台」です。子どもの頃に過ごした土地に久々に帰省したときのことを思い出しました。(小松敦/「海原」)


マシュマロのやうなまなぶた春の風邪
島田由加
「鳰の子」
2026年8・9月合併号より

風邪をひいてしまった。微熱が続く春の風邪だ。高熱ではないことが、布団にくるまり横になって寝るという行為を遠ざけ、この人を更にぼんやりとさせているようだ。鏡を見れば、まぶたが柔らかく盛り上がって腫れている。いつもより白く浮き上がってみえるのだろう。マシュマロの感触と春の風邪の感覚が互いに寄りそっているように思う。風邪は、春にひいたって冬と同じように辛いのに、俳句で出会う春の風邪は、気怠さが好ましい気がして、懐かしくうっとりする。(弦石マキ/「蒼海」)



【次回の投稿のご案内】
◆応募締切=2026年10月5日
*対象は原則として2026年9月中に発刊された俳句結社誌・同人誌です。刊行日が締切直後の場合は、ご相談ください。
◆配信予定=2026年10月10日ごろ
◆投稿先 以下のフォームからご投稿ください。
https://ws.formzu.net/dist/S21988499/

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