
着膨れてなんだかめんどりの気分
正木ゆう子
(第二句集『悠 HARUKA』1994年)
作者は正木ゆう子。第二句集『悠 HARUKA』(1994年)に収録された一句。
「なんだか」と「めんどり」の語感が似ているという発見が良い。「ん」の音のスピード感と、全体のK音と濁音の韻、「なんだか」と気の抜けた軽い内容が一句の中で響きあっている。韻律に楽しい仕掛けが多く、口に出して楽しみたい作品だ。平仮名の表記からは着膨れのフォルムも感じられる。季語「着膨れ」にある動きにくさ、人や街の気配から、この「めんどりの気分」は、もしかすると出荷されるめんどりの気分かもしれない。どんな気分なのか、想像してみるのも楽しいだろう。
正木ゆう子の句集を読んでいると、鳥の句が収録されているが、めんどりの場合は完全に鳥の意識に憑依せず、人間としての気持ちを保っているのも面白い。
「なんだか」や「気分」のような、俳句で上手く使うのが難しいとされる語は、韻律による力を借りるのも一つの手かもしれない。
(星野いのり)
【執筆者プロフィール】
星野いのり(ほしの・いのり)
1997年生まれ。俳句結社「炎環」同人。俳句雑誌『noi』誌友。現代俳句協会所属。第14回鬼貫青春俳句大賞。第2回全国俳誌協会新人賞。第4回俳句四季新人奨励賞。第6回円錐新鋭作品賞。