冬の季語

【冬の季語】着ぶくれ

【冬の季語=三冬(11〜1月)】着ぶくれ

【解説】

冬の寒さをしのぐために何枚もの服を重ねて着る。このふくらんだ状態を着ぶくれという。

似た季語に「重ね着」「厚着」がある。違いとして「重ね着」「厚着」は客観的・説明的だが、「着ぶくれ」はふくらんでいるという認識があり主観的だ。だから〈こんなに着ぶくれている自分は〉という自嘲的な句が多い。


【着ぶくれ(上五)】
着ぶくれのおろかなる影曳くを恥づ 久保田万太郎
着ぶくれて命をわづか濃くしたる 小田島亮悦
着ぶくれて田へ行くだけの橋見ゆる 吉田穂津 
着膨れて鳥の鼓動となりにけり 藤井あかり
着膨れの呼ばれて首を回しけり 小野あらた
着ぶくれてビラ一片も受け取らず 髙柳克弘
着膨れて最背面で激怒する 御中虫
着膨れて鳥の鼓動となりにけり 藤井あかり
着膨れてメタセコイヤのまはり掃く 南十二国
着ぶくれて七人掛けに七人が 堀切克洋

【着ぶくれ(中七)】
心まで着ぶくれをるが厭はるる 相生垣瓜人
鳩降りてきて着ぶくれし人の前 野村浜生
降灰のみな着膨れて歩むかな 中条明
百貨店めぐる着ぶくれ一家族 草間時彦
乗客の着ぶくれてをり縄電車 佐藤芙美子
再会や着ぶくれの背を打てば音 斉藤志歩

【着ぶくれ(下五)】
なりふりもかまはずなりて着膨れて 高浜虚子
人待つ如人厭ふごと着膨れぬ 石田波郷
通りゆくあの人今日は着ぶくれて 杉浦千種
子の家におろおろ住むや着膨れて 中村路子
愛国も売国もみな着ぶくれて 鈴木砂紅


  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

関連記事

  1. 【冬の季語】鬼やらい
  2. 【冬の季語】一月
  3. 【春の季語】花
  4. 【秋の季語】秋薔薇
  5. 【春の季語】春の灯
  6. 【夏の季語】夏至
  7. 【新年の季語】歌留多
  8. 【秋の季語】月

おすすめ記事

  1. 雨月なり後部座席に人眠らせ 榮猿丸【季語=雨月(秋)】
  2. 未来より滝を吹き割る風来たる 夏石番矢【季語=滝(夏)】
  3. いちごジャム塗れとおもちゃの剣で脅す 神野紗希【季語=苺(夏)】
  4. 【冬の季語】小春
  5. 二ン月や鼻より口に音抜けて 桑原三郎【季語=二ン月(春)】
  6. こんな本が出た【2021年1月刊行分】
  7. 前をゆく私が野分へとむかふ 鴇田智哉【季語=野分(秋)】
  8. 【冬の季語】待春
  9. 纐纈の大座布団や春の宵 真下喜太郎【季語=春の宵(春)】
  10. 卒業の歌コピー機を掠めたる 宮本佳世乃【季語=卒業(春)】

Pickup記事

  1. 鞦韆は漕ぐべし愛は奪ふべし 三橋鷹女【季語=鞦韆(春)】
  2. 【書評】小川軽舟 第5句集『朝晩』(ふらんす堂、2019年)
  3. 【春の季語】蝶生る
  4. 【秋の季語】松茸
  5. 神保町に銀漢亭があったころ【第35回】松川洋酔
  6. 肩につく影こそばゆし浜日傘 仙田洋子【季語=浜日傘(夏)】
  7. 「パリ子育て俳句さんぽ」【12月18日配信分】
  8. 待春やうどんに絡む卵の黄 杉山久子【季語=待春(春)】
  9. 【秋の季語】紫式部の実/式部の実 実紫 子式部
  10. 結構違ふよ団栗の背くらべ 小林貴子【季語=団栗(秋)】
PAGE TOP