【秋の季語】霧

【秋の季語=三秋(8月~10月)】霧

【ミニ解説】

地面に近い空気が冷やされ、大気中の水蒸気が凝結して細かい水滴になったものが「霧」。気象用語における区別とは違い、俳句では春を「霞」、秋を「霧」と呼び分けます。

「海霧」は夏の季語。


【霧(上五)】
霧時雨冨士を見ぬ日ぞ面白き 芭蕉
大霧や筏をここに組み直す 石橋忍月
霧こめて山に一人の生終る 山口誓子
霧の中にぽつかりと浮き街はあり 原民喜
川霧わく湯屋そこばかり鴉立つ 赤尾兜子
ふと霧をすぎゆく斧や空とむらい 九堂夜想
霧晴れてときどき雲を見る読書 田島健一
みなが霧感じてバドミントン大会 田島健一
霧笛の夜こころの馬を放してしまう 金子皆子
霧のなか霧にならねば息できず 堀田季何

【霧(中七)】
白樺を幽かに霧のゆく音か 水原秋櫻子
一つの屍茫々霧をへだてけり 鈴木しづ子
一切があるなり霧に距てられ 津田清子
恋人とはなれて霧を歩むなり 村越敦
髪解きて霧のにほひをこぼしけり 小津はるみ
踊るのが楽しい霧のサラリーマン 田島健一

【霧(下五)】
中天に並ぶ巌あり霧の奥 正岡子規
ランプ売るひとつランプを霧にともし 安住敦
まなざしの球体となり霧をゆく 鴇田智哉
なほ母をうしなひつづけ霧ぶすま 櫂未知子
睡りては人をはなるる霧の中 斎藤玄

【霧(その他)】
さやうなら霧の彼方も深い霧 三橋鷹女
霧の五戸よるは夜霧のともしび五つ 岡崎水都
霧に白鳥白鳥に霧といふべきか 金子兜太


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