倉田有希の「写真と俳句チャレンジ」【第5回】


【第5回】

写真と俳句、呼称の乱立


前回、写真と俳句の書籍を紹介しました。お気づきの人もいたと思いますが写俳、写真俳句、俳写、フォト俳句・・・。まだ他にもあり、写真と俳句のコラボレーションは呼称が定まっていません。webの国語辞書にもそれらの言葉は見つかりません。

これはさらに登録商標の問題があってややこしい。
先程、特許情報プラットフォームで検索してみたところ、「写真俳句」は3つのジャンルで商標登録がありました。これは元々出版社が権利を有していた商標が、廃業に伴い個人へ譲渡されたと聞いています。また、10年ほど前に調べたときは「フォト俳句」と「俳写」の商標登録もありましたが、現在は見当たりません。商標権の更新をせずに消失か、権利の放棄と思われます。自分としては以下のような認識です。

インターネットとデジタルカメラの普及に伴い、公募やブログサイトで、写真と俳句のコラボレーションが一般的になり始めたのが、自分の記憶では2005年頃から。

・その時点でまだ普通名称ではない言葉が商標登録され 権利者や近い立場の人によって普通名称のように用いられた。

・商標のことを知らない多くの人も、なんとなく普通名称であるかのように使っていた。

カメラの話だと登録商標である「デジカメ」が日常的にも使われてきましたから、上記の話はそれほど不自然なことではないと思われます。ただし商標故の事情もしばしありました。

NHKが2009年にBS放送の番組をはじめるとき「フォト575」というタイトルにして、写真と俳句コラボのことも「フォト575」と呼称していました。たしかこれは上記の商標のことが理由。

信濃毎日新聞社が社の記念事業として公募や現地イベントを開催したとき、「フォト✕俳句」(読みは、フォトかけるはいく)と称していました。これは「フォト俳句」が商標である為、別の呼称を使ったと社の人から聞きました。

富士通が以前 web上で開催していた「私の写真俳句コンテスト」は、サイトのタイトルで「写真俳句」の言葉の横に、商標を示す「TMマーク」が入っていました。いまもサイトを見ることが出来ます。

「俳写」の商標登録は個人で、前回に紹介した書籍の一冊には、本の帯に著者自身の言葉で、商標を取得したことの記述があります。

写真と俳句のコラボについて商標権のことでのトラブルは聞いたことはありませんが、その後の呼称の乱立や混乱と無関係ではないと思う。いまでも他に「写真・俳句」や「俳句写真」、「写真✕俳句」「写真句」「俳句フォト」、様々な表記を見かけます。訳わからん状態。

個人的には「写俳」という言葉が好きですけど、一般的には「写真俳句」のほうが判り易いかも知れない。呼称のことは混乱が続いていて、今後どれかひとつの言葉に落ち着くのか、ちょっと判りません。

呼称については中立的な気持ちもあるので、自分では写真俳句と言ったり、写俳と書いたり、リベラルにやっています。ただしあらたまった場では、例えば展示会のときは「写真と俳句」と表記しています。この連載のタイトルもそれで「写真と俳句チャレンジ」という訳です。

本日のまとめ

○写俳、写真俳句、フォト俳句、俳写、その他、呼称が乱立状態。

○写真と俳句のコラボレーションを意味するいくつかの言葉は以前商標登録された。

○個人が使う表記については、どの呼称でも問題は無いと思われる。

○商標などの経緯もあって混乱が続き、いまも呼称は定まっていない。


【執筆者プロフィール】
倉田有希(くらた・ゆうき)
1963年、東京生れ。「里俳句会」を経て現在は「鏡」に所属。
「写真とコトノハ展」代表。 ブログ「風と光の散歩道、有希編


【倉田有希の「写真と俳句チャレンジ」バックナンバー】

>>第4回 写真と俳句の流れと書籍
>>第3回 写俳亭、伊丹三樹彦
>>第2回 石田波郷と写真と俳句
>>第1回 写真と俳句



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