季語・歳時記

【秋の季語】檸檬

【秋の季語=晩秋(10月)】檸檬

【解説】レモンはインドのアッサム地方が原産。のちに地中海沿岸諸国に伝わり、とくにイタリアで栽培がさかんになりました。イタリアのシチリア島は、レモンで有名。しかし生産量でいうと、1位がインド、2位メキシコ、3位中国です。日本のレモン輸入元は、主にアメリカやチリなので、そういうイメージがないですね。

一方、日本でレモンといえば、梶井基次郎の短編小説。京都・丸善の書棚の前に、鮮やかなレモンの爆弾を仕掛けたつもりで逃走するという空想が描かれていることで有名な作品。

檸檬置く監視カメラの正面に 堀田季何

は、そういう文脈を逆手にとったような句とも読めますね。


【檸檬(上五)】
檸檬ぬくし癒えゆく胸にあそばせて 鷲谷七菜子
レモンは灯にわが同年の橋腐る 寺田京子
檸檬一つかじれば澁澤龍彦死す 皆吉司
レモン齧れよ青空の落ちて来よ 夏井いつき
檸檬置く監視カメラの正面に 堀田季何
檸檬切る母譲りなる医者嫌ひ 堀切克洋

【檸檬(中七)】
うつうつと一個のれもん妊れり 三橋鷹女
暗がりに檸檬浮かぶは死後の景 三谷昭
嵐めく夜なり檸檬の黄が累々 楠本憲吉
恋ふたつ レモンはうまく切れません 松本恭子

【檸檬(下五)】
いつまでも眺めてをりぬレモンの尻 山口青邨
絵葉書の巴里の青空レモン切る 下山芳子
ある日には爆弾の耳をして 檸檬 松本恭子
色のなき写真の中のレモンかな 浅井愼平


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