【夏の季語=仲夏(6月)】五月雨
さみだれ。「さつきあめ」と読むこともあるが、いずれにしても陰暦「五月」(現在の「六月」ごろ)に降る長雨のこと。「梅雨」と同義であり、いまの「五月」に降る雨、というのは誤りということになる(「五月晴」も同様)。「さみだる」という動詞として用いることもある。
山里の卯の花くたすさみだれに垣根を越ゆる玉川の水 藤原良経
など、和歌の時代から詠まれてきた季節の題。
【五月雨(上五)】
五月雨や家ふり捨てなめくじり 野沢凡兆
五月雨の木曾は面白い處ぞや 正岡子規
五月雨や起上がりたる根無草 村上鬼城
さみだれや船がおくるる電話など 中村汀女
五月雨花の絶え間をふりにけり 久保田万太郎
さみだれのあまだればかり浮御堂 阿波野青畝
五月雨や珈琲で飲む風邪薬 小島明
さみだれはつぶやきつづけ焼豆腐 鍵和田秞子
さみだれの電車の軋み君が許へ 矢島渚男
さみだれに橋の名ひとつ忘れけり 常原拓
【五月雨(中七)】
あひふれしさみだれ傘の重かりし 中村汀女
宇宙論軒にさみだれ巡らせて 矢島渚男
大き鳥さみだれうををくはへ飛ぶ 田中裕明
【五月雨(下五)】
髪剃や一夜に錆て五月雨 野沢凡兆
【その他の季語と】
川に佇つ五月雨傘の裏に蛾が 波多野爽波
五月雨や掃けば飛びたつ畳の蛾 村上鞆彦